2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13F03401
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川端 猛夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (50214680)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GHOSH Harisadhan 京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 配糖体 / 全合成 / 位置選択性 / グリコシル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖類は感染過程や癌の転位などの細胞間相互作用や細胞の分化など生命維持の根幹に関わっている。このような生物学的現象の探求やそれに基づく医薬品開発には、多糖類や配糖体などの糖関連物質の精密合成が必須で既に膨大な合成研究があるが、対応するペプチド合成に比べて格段に複雑である。これは糖類が複数の水酸基を持つため、それらを区別して結合形成を行う困難さに起因している。この問題点はこれまで複数の水酸基を保護-脱保護により区別する多段階合成法により克服されてきた。申請者は近年、このような多段階の保護-脱保護操作によらない一段階の触媒的位置選択的官能基化を基盤とした糖関連物質の精密有機合成法の開発に取り組み、位置選択的アシル化法を見いだした。本研究ではこの触媒的位置選択的アシル化を鍵工程とし、保護基の使用を最小限に抑えた配糖体天然物の位置選択的全合成に取り組む。当初、標的とした配糖体天然物 tellimagrandin II とcoriariin の全合成は研究室の他のメンバーとの共同により、本研究開始後にすでに達成した。そこで、本研究では配糖体天然物合成のさらなる効率化と糖類合成の新たなチャレンジとして、触媒を用いる位置選択的グリコシル化法の開発に取り組むこととした。種々Ghosh博士と議論の末、アニオン結合能を持つチオウレアを活性部位とする分子認識型触媒を設計、合成した。残念ながら、この触媒は現段階ではグリコシル化の活性が弱く、選択性発現にはいたっていない。一方で本触媒がハロアミノ化の良好な触媒になることを見いだした。現在、グリコシル化触媒およびハロアミノ化触媒の両面から、天然物合成への適用を目指して検討を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初本研究で標的とした 配糖体天然物 tellimagrandin II とcoriariinの全合成は研究室の他のメンバーとの共同により、本研究開始後に達成した。 tellimagrandin II とcoriariin は無保護グルコースからそれぞれ6工程、および8工程で達成した。既知法( tellimagrandin II は14工程、coriariin は15工程)と比較すると、圧倒的に短工程である。この全合成の成功を踏まえ、本研究では配糖体天然物合成のさらなる効率化と糖類合成の新たなチャレンジとして、触媒を用いる位置選択的グリコシル化法の開発を目指している。また本触媒は、オレフィン類のハロゲン化の良好な活性を示し、種々の基質認識部位の導入も可能なことから、今後の検討により、天然物合成にも適用可能な新世代のハロゲン化触媒としての展開が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2つの方向から天然物合成に向けたアプローチを行う。 (1)巨大な配糖体天然物 coriariin の全合成を既に達成しているが、鍵反応の位置選択性が未だ不十分である。そこで、これまで当研究室で合成してきたPPY型触媒を再検討すると同時に、本研究で開発したチオウレア型触媒も用い、dual catalysis により鍵反応である位置選択的アシル化の選択性向上を目指し、全合成効率を格段に向上させたい。 (2)関連する基質認識部位をもつPPY型アシル化触媒が8員環ラクトン形成に高い活性を示すことを我々は既に見いだしている。そこで、Ghosh博士の開発した分子認識型チオウレア触媒を8員環ハロアミノ化や8員環ハロラクトン化法開発へと展開し、従来困難であった中員環構築を基盤とする天然物合成に取り組む。
|