2013 Fiscal Year Annual Research Report
多分散性は構造・ダイナミクス・熱力学の間に影響を与えるか
Project/Area Number |
13F03707
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 肇 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (60159019)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
INGEBRIGTSEN Trond 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2016-03-31
|
Keywords | Lennard-Jones(LJ)液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常の単成分Lennard-Jones(LJ)液体は、強相関液体の代表例であり、この液体系に ついては、その相挙動、ダイナミクスに関して過去に膨大な研究成果の蓄積がある。また、その取扱いの容易さから、分子動力学計算において 様々な高速化の手法が発展している。そこで、研究の出発点として、この単成分LJ液体に粒子サイズの多分散性を導入することで、強相関性と中距離結晶秩序の関係性、さらには多分散性の影響を系統的 に調べることを目的にした。まず、グラフィックカードを用いたGPU計算用のソフトウェアを開発し、シミュレーションのスピードを約3桁から4桁高速化することを試みた。専用のソフトウェアの 開発は順調に進み、すでに当初の目的はおおむね達成された。粒子サイズの多分散性を導入したLennard-Jones(LJ)液体のシミュレーションに着手し、早くも結果得つつある。多分散性は、多くの系において広くみられ、系の秩序化に対 してフラストレーションとして働くことが知られている。特に実際に実験などで用いられるコロイド系などでは多分散性を避けて通ることはほ とんど不可能である。従って、多分散性が、元の単分散の液体にどのような影響を与えるかは、液体の基本的な性質が、多分散性に対してどの 程度ロバストであるかを知る上で極めて重要である。特に実験において避けることができないこのような非理想性の影響を知ることは、実験と理論を比較の上で重要な情報を提供するものと期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の研究室においては経験のなかったGPUの計算手法を導入し、従来我々が行ってきた分子動力学シミュレーションの計算速度を約3桁から4桁高速化することに短期間で成功した。これにより、研究の効率が飛躍的に高まることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
TRONDはこれまで、デンマーク・ロスキルド大学のDyre教授のグループにおいて、液体系の"強相関性"と称される問題について数値的・理論的に取り組んできた。種々のモデル液体系におけるシミュレーション結果は、この"強相関性"の概念が、液体の熱力学特性、輸送特性の理解に有用たりうることを示している。そこで、液体の強相関性の理解において展開された研究手法・概念を援用することで、ガラス転移点近傍におけるMRCOの成長と動力学的異常に関する理解の深化を目指す。さらに、このようなMRCOの成長はサイズに弱い多分散性がある場合に特に顕著となることが知られている。多分散性の度合いは系のフラストレーションの強さに関係しており、多分散性が液体の構造、ダイナミクス、熱力学的性質、あるいはこれら相互の関係性にどのような影響を及ぼすかは非常に興味深い。このような問題についても数値実験的なアプローチによる理解を目指す。
|