2014 Fiscal Year Annual Research Report
高解像度大気大循環モデルと大型大気レーダーを用いた大気重力波の研究
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13F03734
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 薫 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90251496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MIHALIKOVA Maria 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大気重力波 / 南極大型大気レーダー / 成層圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
PANSYレーダーによる2013年1年分の定常観測データを用いて、Sato (1994)がMUレーダーのデータを用いて行ったのと同様の解析を行い、南極昭和基地下部成層圏の慣性重力波の特性を解析した。PANSYレーダーのデータ精度の高い対流圏界面直上の高度10~12kmに着目した。まず、オリジナルの時間高度断面図から卓越が確認できる1~3kmの鉛直波長成分を取り出すため、カットオフ4kmのハイパスフィルターをかけ、周波数スペクトルを求めた。得られたスペクトルの特徴から、解析対象とする慣性重力波を周期4時間以上の成分として取り出した。そしてフィッティング法によりホドグラフ解析を行い、波の各種のパラメータを推定した。特に、PANSY観測の特長である鉛直風成分を解析することで、推定パラメータのダブルチェックが可能となり、より信頼性の高い推定となった。まず、おおむね上向きエネルギー伝播成分が卓越するが、冬季には下向きエネルギー伝播成分が増えることが示された。これらはラジオゾンデ観測データに基づく先行研究(Yoshiki and Sato, 2000)とも整合的である。また、水平波長や鉛直波長、固有周期に関する統計的性質を求めることができた。得られた結果として興味深いのは、南極での慣性重力波の力学特性は、中緯度と異なり、はっきりした季節性を示さないことである。むしろ、低気圧や高気圧等、総観規模擾乱が昭和基地近辺にいるときに、重力波のエネルギーが増えるなど、イベント的な時間変化を示していることがわかった。この成果は2015年4月に行われるEGU(ヨーロッパ地球科学連合)の春の大会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は重力波解像気候モデルデータを用いた解析も進める予定であったが、予想外にPANSYレーダーデータ解析に時間が必要となり、それが困難である見通しとなった。そこで観測データを中心とした研究を進めることとなった。これは、多分に、今年度明らかにしたように、極域の重力波の特徴が中緯度と異なり、季節変化という捉え方では擾乱の時間変化を説明するのが難しいことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も下部成層圏慣性重力波の特性を整理し、特に総観規模擾乱に着目し、2013年1年間に見られる重力波の時間変化をもたらす要因を明らかとする。また、得られた結果を論文としてまとめ出版する。
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