2014 Fiscal Year Annual Research Report
バイオカルチャーに関する法律業:変動、変化、癒しの環境法への導入
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13F03778
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
蟹江 憲史 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BAVIKATTE S.K. 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 伝承(Mythology) / Vision Fast(自然療法の1つ) / コイサン族(Khoi-San) / School of Lost Border / ヒーリング(Healing) / 権限付与(empowerment) / ストーリー(story) |
Outline of Annual Research Achievements |
南アフリカ、コイサンでの調査の実施のため、米国のSchool of Lost Bordersの視察に再度訪れ、自然を用いたセラピーのプログラムを体験し、プログラムを運営している環境心理学者から、その方法論を学ぶとともに、背景にある心理学的側面への理解を深め、内容の確認を充分におこなった。このプログラムは、コイサンに住む先住民のように、植民地政策、アパルトヘイトなどで独自の文化や伝統を失い、環境保全の習慣に負の影響を受け、危機に瀕するコミュニティを対象とした調査に適している。 その後、南アフリカのコイサン族を訪れ、先住民のリーダー、関連研究者、法律家を対象に、School of Lost Bordersからも2名が参加し、上記の自然を用いたセラピーモデルによる調査を実施した。結果、コイサン族の伝統知識の価値が認識され、先住民のリーダーと地域の人々の関係が改善され、コイサン族の伝統知識へのアクセスを希望する企業と「資源へのアクセスと利益配分」交渉にも発展した。この調査から、環境法や政策の立案、採択、実施を促進するための、リーダーシップ、ガバナンス、紛争解決等のプロセスの考察に導けた。 環境法に携わる法律家の従来のこういったコミュニティへのかかわりは、権利や訴訟等、法的な権限付与にフォーカスしていたが、勝訴したとしても社会的にも環境的にも健全にむすびつくものではなかった。本研究でのアプローチは、独自の文化への帰依、癒しといったプロセスを用いることで、環境保全の伝統に再び戻るための法的サポートの基盤を築くものである。 プログラムの成功を受けて、南アフリカのNGO「Natural Justice」と共同で、コイサンのリーダー30名を対象に、コミュニティのビジョンを明確にし、自然保全のルールの再確認、プロトコルの策定を支援するプロジェクトを3月にたちあげた。 調査で、トレーニングマニュアルとして使用したグラフィックノベルは、現地の数々のメディアにとりあげられている。こうした成果や一連のプロセスをまとめ、研究論文、雑誌論文の執筆を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、コイサン地域のような先住民のコミュニティを支援するために、自然を用いて行うセラピーが変革をもたらす力になりうることを明確にし、検証することであったが、その目標を達成したばかりでなく、加えて、すでに実験から実施段階へと進み、その成果から、さらに次の段階にすすめてほしという要望もでてきている。 他、調査プログラムの実験の結果、「資源へのアクセスと利益配分」交渉への発展につながり、研究内容の結果をさまざまなメディアを通じて発表し、関心の喚起が、あらたなプロジェクトヘの要望をうみだした。 本研究を通して、社会的文化的プロセスの価値とニーズを、法の介在により、調査したコミュニティに定着させたことは意義があった。強固な社会的文化的基盤があった上で、恒常的な法的意義が築かれるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度、本研究をすすめるにあたって、「National Khoi San Council」のリーダーシップのもと、3月にたちあがったプロジェクトを拠点として、先住民のコミュニティを対象とした自然を用いたセラピーを実施し、その中でセラピーの価値に注目した研究結果を特定していく。 本研究を通して、単なる法的介在だけではなく、コミュニティの社会的文化的なダイナミクスにもかかわるという新しいアプローチが重要であり、法的介在については慎重におこなわなければならないことを強調していきたい。次年度は引き続き、現在行っている研究を継続し、さらに発展させていきたい。
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Research Products
(6 results)