2014 Fiscal Year Annual Research Report
個人意識・共同体・幸福 (well-being)と「無」
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13F03791
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田口 茂 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (50287950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ALTOBRANDO Andrea 北海道大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 現象学 / フッサール / モナド論 / 日本哲学 / 西田幾多郎 / 国際共同研究 / 自我 / 自己 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年1月から、研究代表者と分担者は、共同でディスカッション・グループPhenomenology and Japanese Philosophyを開始し、主に現象学と日本哲学に関連するトピックをめぐって、18回にわたって英語での議論を重ねた。2014年前半、分担者はフッサールのモナド概念、および、それとライプニッツのモナド概念との関係に関する論文を完成し、イタリアのAクラスの学術誌であるDiscipline Filosoficheに発表した。同時期に、分担者はモナド概念をめぐる研究を西田幾多郎の哲学と付き合わせるという課題に取り組み始めた。また、日本哲学の専門家であるエンリコ・フォンガロ東北大学准教授と共同研究を開始した。西田のテキストや二次文献、ならびにフォンガロ准教授および研究代表者との対話を通して、分担者は西田哲学に関する広範かつ正確な理解を得ることができた。これらの作業と並行して、分担者は「純粋自我」の概念の研究を進めた。この方向では、ゲイレン・ストローソン氏が近年発表している自己論を研究した。とりわけ、同氏が提唱しているSesmet と呼ばれる独特の自己概念を現象学的立場から批判的に検討した。その成果は、北大でのディスカッション・グループで発表されたほか、2014年6月にはピサ大学で開催された国際会議Hegel and the Phenomenological Traditionで行った研究発表でも報告した。その後、純粋自我に関する研究をさらに継続し、2015年2月に、さらに改良されたヴァージョンの論文を香港中文大学で発表することができた。また、分担者の企画により、エンリコ・フォンガロ・東北大学准教授と張政遠・香港中文大学講師を北海道大学に招聘し、講演会を開催することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モナド論に関する研究は順調に進展し、イタリアのAクラスの学術誌に成果を論文として発表することができた。近代日本哲学、とりわけ西田幾多郎の研究は、研究代表者およびエンリコ・フォンガロ東北大学准教授の助力を得て大幅に進展し、西田哲学の基本的理解と、部分的にはかなり詳細な理解を得ることができた。現代哲学における自己論の研究、とりわけゲイレン・ストローソン氏の Sesmet の概念の研究も大幅に進展し、これに触発されつつ、分担者は独自の自己論研究を展開している。その成果は二つの国際会議で発表され、さらに次年度以降その成果が公表される予定である。国内・海外からのゲストを招いた講演会・ワークショップも開かれ、2014年11月には、国際ワークショップ "Personal Perspectivity" を開催し、パドヴァ大学の Pierfrancesco Biasetti 氏の他、複数の国内研究者が発表を行った。エンリコ・フォンガロ氏と張政遠氏も招聘し、講演会・ワークショップを行った。ただし、当初招聘する予定だったG.Strawson氏、S.Geniusas氏については、両氏の都合もあり、2015年に招聘することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後研究代表者と研究分担者は、相互に協力して、近代日本哲学と現象学との交差領域に開かれる哲学的思考の可能性を積極的に開拓していくことを試みる。そのために、相互のディスカッションの機会を密にし、また相互の研究論文へのコメントなどを通して、共同研究を進めていく。そのため、英語によるDiscussion Group を引き続き定期的に開催していく。 さらに、上記のような哲学的可能性を検証し、さらにその視野を広げていくために、国内・海外から積極的にゲストを招聘し、ワークショップや講演会を開催していく。2015年度は、G.Strawson氏、S.Geniusas氏を招聘することを予定しているが、両氏の来日に合わせて、国際学会を開催することを計画している。他の研究者も招待した上、Call for papers によって研究発表を行う研究者を募る。これにより、国際共同研究を拡大し、共同研究の成果をさらにより広い視野から検証・吟味することができる。
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Research Products
(13 results)