2013 Fiscal Year Annual Research Report
Microcystis属ラン藻の異常増殖を制御するための生活環に関する研究
Project/Area Number |
13F03804
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
原田 健一 名城大学, 大学院総合学術研究科・薬学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BOBER Beata 名城大学, 大学院総合学術研究科・薬学部, 外国人特別研究員
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Keywords | ラン藻 / Microcystis / β-carotene / β-ionone / β-cylocitral / CCD |
Research Abstract |
本研究では、Microcystis属ラン藻の「生活環」は自ら産生する有機化合物により制御されていると想定し、種々の手法を用いてこの「生活環」を明らかにする。特に、Microcystis属ラン藻はβ-cyclocitralや数種の低級アルコ一ルなどの揮発性化合物を産生することが判明していることから、本年度(11月~3月)は揮発性化合物に関する以下の実験を行った。1) 3種のMicrocystis属ラン藻の培養挙動および揮発性化合物の産生挙動を追跡した。その結果、いずれのラン藻もβ-cyclocitral、β-iononeや2-phenylethanolなどの低級アルコールを多量に産生していた。2) Microcvstis属ラン藻とともにそれ以外のラン藻(Pseudoanabaena, Anabaena, Planktothrix, Synechocystis)に関しても培養挙動および揮発性化合物の産生挙動を追跡した。Microeystis属ラン藻は上述の結果が再現したが、他の4属のラン藻ではβ-iononeは共通に産生されていたが、β-cyclocitralはほとんど生産されておらず、また低級アルコール類の産生も限定的であった。一方、5種のラン藻類の培養時の外観観察では差異は見られず、共通に緑色から黄色に変化する(bleaching)にともない、chlorophyllやphycocyaninは減少するが、β-caroteneが増加する現象が観察された。3)β-Caroteneよりβ-iononeやβ-cyclocitralを開裂させる酵素、carotenoid cleavage dioxygenase (CCD)の遺伝子の有無を調査した。3種のMicrocystis属ラン藻には、2種のCCDが存在していることが確認されたが、他の4属のラン藻では上述の2種のCCDは見出されなかった。以上の結果から以下の知見が得られた。(1)培養ラン藻が呈する緑色から黄色に変化する過程はβ-iononeにより引き起こされている。(2)β-iononeの生成にはCCDが関与していない可能性がある。(3)β-cyclocitralや低級アルコール類の産生はMicrocystis属ラン藻にのみ観察されることから、本属ラン藻の「生活環」に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたように、Microcystis属ラン藻と他の4属のラン藻とでは、その揮発性化合物の産生挙動およびCCD遺伝子の有無に違いが認められ、これらがMicrocystis属ラン藻の「生活環」の解明の足ががりになると考察している。ただ、この年度は5ヶ月のみの実験期間であったことから、交付申請書に記載した「KDC」に関する実験は手付かずである。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画に沿って実験を行う予定である。まず、前年度手付かずであったKDC(2-keto-acid decarboxylase)遺伝子の有無を5種のラン藻を用いて調査を行う。次に、取得したCCDおよびKDCに関する酵素活性に関する実験および栄養、光および細胞数による「ストレス実験」を実施する。さらに、津久井湖や相模湖でここ10年間で得られた異常増殖、青色化、突然の消滅現象や各種藻類の季節変動現象と実験室で得られた結果との比較を行う。
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