2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13GS0011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 昭彦 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (90182815)
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Keywords | チロシンキナーゼ / STAT / SOCS / 炎症 / チロシンりん酸化 / サイトカイン / 好酸球 / 造血因子 |
Research Abstract |
サイトカインのシグナルは単に細胞増殖のみならず免疫系の制御を通じて発がんやがんの進展に重要な役割を担っている。また最近TNFなどの炎症性サイトカインとがん化についてNF-kB経路については多くの報告が見られる。我々はもう一方の炎症性サイトカインのシグナルに中心的な役割を果すSTAT転写因子群とその制御系であるSOCS分子、およびRas/MAPキナーゼ制御因子Sprouty/Spredファミリーとがんに関する研究を行ってきた。SOCS1による炎症と癌の関係についてSOCS1ヘテロマウスを用いて解析を行った。ジエチルニトロソアミン(DEN)によるマウス肝臓がんモデルを用いて2対のSOCS1遺伝子のうち1本を欠損するSOCS1-/+(ヘテロ)マウスと野生型マウス(SOCS1+/+)を用いて肝臓がんの発生率を比較した。その結果ヘテロマウスのほうが野生型マウスよりも3倍程度肝臓がんの発症が多かった。またヒトと同様にオスのほうがメスよりも発症が4倍程度多かった。この結果よりSOCS1遺伝子の発現低下が肝がんに直接関与することが明かとなった。次にジメチルニトロソアミン(DMN)などの化学物質による肝障害モデルを用いて肝臓の組織破壊、繊維化とSTAT,SOCSの関連について調べた。SOCS1-/+ヘテロマウスでは野生型マウスに比べてDMNによる肝障害に感受性が高く、STAT1の活性化も強かった。またTGFβの産生や肝繊維化も促進されていた。逆にIL-6レベルが高くSOCS3の発現誘導がみられ、STAT3の活性化は減弱していた。またBclXなどの抗アポトーシス遺伝子の発現低下がみられた。以上の結果から単純な化学物質による肝障害の系ではSOCS1の発現低下はSTAT1のより強力な活性化をもたらし、結果的にアポトーシスを促進させ、TGFβの産生を促すことで繊維化を促進する。またSTAT3の活性低下によって抗アポトーシス分子の発現が低下し、肝再生も低下することが考えられる。以上の結果よりSTAT1が肝繊維化と肝障害の促進に、SOCS1はその抑制遺伝子であることが示された。またSOCS1欠損マウスでは大腸癌が自然発症することも見い出した。
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Research Products
(6 results)