2014 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍血管新生における新規血管内皮細胞特異的遺伝子の役割解明
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13J00028
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
松本 健 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Lrrc33 / 腫瘍血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
固形腫瘍の増殖には、腫瘍血管新生が必須である。腫瘍血管新生に重要な遺伝子としては、Vegf/Vegfr系、Fgf/Fgfr系、Angiopoietin/ Tie2系などが挙げられるが、まだ多くの未同定な分子機構が存在することが想定され、腫瘍血管新生時に腫瘍血管内皮細胞・腫瘍細胞にどのような遺伝子が作用しているのか包括的に探索することが極めて重要である。我々は現在までに、血管内皮細胞を欠損するVEGFR2ノックアウトマウスを用いたマイクロアレイ解析から、マウス胚発生時の血管内皮細胞において高発現している遺伝子群を184遺伝子単離している。このうち、培養血管内皮細胞を用いたノックダウンモデルにより6遺伝子が血管新生促進に関与することを明らかにしている。今年度、申請者はこのようにして得られた6遺伝子のうち、Lrrc33遺伝子に着目し、ノックアウトマウス(Lrrc33 KO)を用いて、腫瘍増殖における役割を検討した。その結果、Lrrc33 KOでは、皮下に移植した腫瘍細胞の増殖が有意に抑制されることが明らかとなった。また、この個体の皮下に形成された腫瘍内部では、血管量の増大、血管腔の肥大が認められた。この結果は、Lrrc33が腫瘍血管新生の制御に関わることを示めしており、本研究が、現在の腫瘍血管新生療法の主流となっている抗癌剤併用療法の改善に繋がる可能性があり、大変興味深い。また、申請者は、Lrrc33遺伝子の欠損は、発生期および新生児網膜における血管新生には影響しないことも示しており、将来、Lrrc33が腫瘍血管特異的標的分子になる可能性も期待される。今後は、Lrrc33 KOの腫瘍内新生血管の構造変化が血管機能に影響するか否かを検討すると共に、その分子機序を明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究目的」を予定通り遂行した。「RhoJの腫瘍血管新生への役割解明」は、他グループから先行して報告があったため、研究遂行を断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、申請者はLrrc33遺伝子の腫瘍血管新生および網膜血管新生での役割を個体レベルで評価した。この検討により、Lrrc33遺伝子欠損が腫瘍増殖を抑制し、これは腫瘍血管の構造変化を伴うことが明らかとなった。来年度は、蛍光標識デキストランの全身投与実験により、Lrrc33遺伝子欠損個体における腫瘍血管の構造変化が、血管機能に影響するか否かを検討する。
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