2013 Fiscal Year Annual Research Report
サブオーロラ帯/オーロラ帯トラフの様々な時間スケールに対する構造変動の研究
Project/Area Number |
13J00048
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
石田 哲朗 総合研究大学院大学, 複合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | EISCAT / 電離圏トラフ / 季節変化 / 太陽活動度依存性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、北極域電離圏のオーロラ帯/サブオーロラ帯トラフの基本構造を理解し、その生成機構を明らかにすることである。本年度の研究では、欧州非干渉散乱(EISCAT)レーダー観測による過去30年分のデータを使用して、未だ十分に理解されていないトラフの季節変化と太陽活動度依存性の特徴を統計的に調査し、トラフ形成における摩擦加熱の重要性を定量的に示唆することができた。 トラフの季節変化の研究では、トラフの発生頻度とイオン温度の上昇量に着目して解析を進めた。季節変化に伴う日照量の変化が顕著に表れる昼側では、オーロラ帯に形成されるトラフ(オーロラ帯トラフ)の発生頻度が日照域でも4割程度と高い値を示すのに対して、サブオーロラ帯に形成されるトラフ(サブオーロラ帯トラフ)は冬季から夏季かけて発生頻度が著しく減少し、日照域ではトラフが全く発生しなくなることが分かった。オーロラ帯トラフの方がサブオーロラ帯トラフよりも摩擦加熱の割合が2~3割程度高いことから、オーロラ帯トラフは日照域でも摩擦加熱に伴う解離再結合反応(電子密度を減少させる化学反応)によって電子密度減少構造が生き残ると考えられる。 トラフの太陽活動度依存性の研究では、トラフの深さとイオン温度の上昇量に着目して解析を進めた。その結果、オーロラ帯トラフとサブオーロラ帯トラフは共に太陽活動度の上昇に伴ってトラフの溝が深くなるが、その特徴を変化させるプロセスが異なることを定量的に示唆することができた。まずオーロラ帯トラフは、主に春秋に太陽活動度が上昇すると1000Kを超える強い摩擦加熱を有するものが数多く見られるようになり、これに伴う解離再結合反応により溝が深くなり発生頻度も上昇することが分かった。一方で、サブオーロラ帯トラフは太陽活動度に関わらず溝の深いものが数多く見られ、太陽活動度が上昇すると溝の浅いトラフが少なくなることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電離圏トラフの季節変化と太陽活動度依存性の特徴とその原因を理解することができた。また、予定どおりにEISCAT特別実験を実施し、次年度の研究に必要な観測データを取得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のEISCAT特別実験で取得したデータを初期解析し、取得した全9件のイベントについて期待したトラフ内外の構造が確認できた。そのため、来年度は優先順位を上げて特別実験データを解析し、トラフ内外の速い時間変化の物理をまず研究してその成果を学術論文にまとめる。特別実験データを用いた研究の目途が立ち次第、トラフの磁気嵐依存性の研究を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)