2014 Fiscal Year Annual Research Report
音韻論の知見に基づいた日本語の読みの獲得と障害の研究
Project/Area Number |
13J00097
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
迫野 詩乃 大阪大学, 大学院言語文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 読み障害 / 音韻論 / 言語学 / 幼児 / 逐字読み / 非語の復唱 / 音韻構造 / 音読 |
Outline of Annual Research Achievements |
読みの獲得や障害は音韻と密接に関連していると言われているが、日本語においては音韻論の知見をふまえた読みの研究は少ない。本研究の目的は音韻論の知見に基づいて、読みの障害と獲得について明らかにすることである。 今年度の研究については、以下の通りである。読みの障害および獲得と非語の復唱能力との関係性が示唆されている。そこで今年度は、まず定型発達における読みが未熟な幼児 (逐字読み群) は読みが熟達している幼児 (流暢読み群) よりも非語の復唱の成績が低いかどうか、誤用の特徴にも違いがみられるのか、を検討した。この結果をまとめたものを、特殊教育学研究に投稿し、採択が決定した。 さらに、非語の復唱の困難さについては、読みの獲得段階における未熟さと、読み障害の違いはどこにあるのかを明らかにするために、定型発達を示す読みが未熟な幼児と学齢期の読み困難児を対象に、音韻分析を用いた比較検討を行った。この結果について、第40回日本コミュニケーション障害学会学術講演会にて報告した。 また、これまで定型発達を示す幼児を対象とした一連の研究において明らかになった、定型発達における読みが未熟な子どもにみられた音韻構造の影響が、学齢期の読み困難児に同様にみられるのかどうかの課題を昨年度より開始した。今年度はフットおよび音節量について検討を行った。 フットについては、読み困難児も幼児の逐字読み群と同様にフットの影響を受けるのかどうか、つまり3モーラ語の反応潜時がF+F構造をもつ4モーラ語よりも長いのかどうかを検討した。この結果について、第52回日本特殊教育学会大会で報告した。音節量については、読み困難児も逐字読み群と同様に音節量の影響を受けるのかどうか、すなわちHLの反応潜時がLHよりも短いのかどうかを検討した。この結果について、第59回日本音声言語医学会総会・学術講演会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、音韻論の知見に基づいて読みの障害と獲得について明らかにすることである。幼児を対象とした読みと発話に関する研究については論文掲載決定に至った。また、読み困難児を対象とした読みに及ぼす音韻構造の影響に関する研究についても、順調に進んでおり、明らかになった結果について順次国内学会にて報告することができている。さらに、発話に及ぼす音韻的側面の影響についてはこれまでとは違った視点からふみこんだ検討を行い、国内学会で報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は、幼児および学齢期の読み困難児の音韻に関する研究を継続することにより、読みの獲得および障害に関わる音韻の問題をさらに明らかにし、研究の仕上げとする。今後は、まず読み困難児に及ぼす音韻構造の影響について、まだ結果を報告していないものについて結果をまとめ、学会発表および論文投稿を行う。 また、学齢期の読み困難児を対象に音韻の困難さがどのように変化していくのかを見るため、1年目に行った課題と同様のものを2年目も行ったので、その結果についてデータ分析を行う。さらに、3年目も同様に調査を依頼する予定である。 これまであまり注目してこなかった読み誤りについても、前年度よりはじめた音韻分析等の新たな視点からの分析を行っているところである。データ分析後、これについても研究発表を行う準備をする。
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Research Products
(4 results)