2013 Fiscal Year Annual Research Report
社会的排斥に対する自己防衛プロセスの検証:自己と内集団の連合という観点から
Project/Area Number |
13J00104
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 匠 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会的排斥に対する防衛 / 自己防麿プロセス / 自己と内集団の連合 |
Research Abstract |
本研究の目的は、次の2つであった。まず第1に、本研究は「自己と内集団(自分が所属する集団)の連合が社会的排斥によって生じる不快感を低減できるかどうかを明らかにする」ことを目的とした。第2に、本研究は「社会的排斥がもたらす脅威を低減するときに、外集団(自分が所属していない集団)に対する否定的態度を抑制できるかどうかを検証する」ことを目的としていた。第1の目的については、本研究の仮説と一致して、自己と内集団の連合は社会的排斥が与える不快感を低減する機能をもつことが示唆された。それに対し、第2の研究目的については、事前仮説を支持する結果は得られなかった。具体的には、社会的排斥を受けても外集団への否定的な態度は促進されず、仮説の前提条件が満たされなかった。つまり、自己と内集団の連合を強めても外集団に対する否定的態度は強化されず、両者の関連はかならずしも強くはないと想定できる。このように、実験者が導出した仮説の一部は支持されてはいない。しかし、もともと実験者が想定していた仮説とは別に、新たな知見が明らかになった。この点について、事前に測定した社会的自己制御の能力が高い人は、排斥を受けても自己と内集団の連合が強くはならなかった。それに対して、社会的自己制御の能力が低い人は、排斥を受けると自己と内集団の連合が強くなることが示されている。以上のように、本研究は社会的俳斥に対する自己防衛反応と、社会的自己制御という個人差との関連について新たな知見を提出することができた。すなわち、自己と内集団の連合を通じた自己防衛反応は個人差によって規定されており、社会的自己制御が高い人は防衛反応そのものが生じにくいのである。以上の知見については、個別のミーティングや研究会で発表・議論をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はこれまでに社会的排斥がもたらす否定的影響や心理的プロセスについて実証的な検討をおこない、仮説を支持するもしくは支持しない結果が得られている。このうち、仮説を支持しない結果については新たな発見も見出しており、全体として本研究は順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は社会的排斥がもたらす影響プロセスについて、いままでの研究知見をふまえた発展的な検討をおこなう予定である。それと同時に、社会的排斥がもたらす影響プロセスだけではなく、社会的排斥を規定する状況や心的要因について考察を深めることを目指している。
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