2013 Fiscal Year Annual Research Report
スミレ属における繁殖様式の進化に関する生態遺伝学的研究
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13J00130
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
速水 将人 北海道大学, 大学院環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 繁殖戦略 / 種子繁殖 / 開放花 / 閉鎖花 / クローン繁殖 / 種内変異 / 分子系統 / スミレ属植物 |
Research Abstract |
1. オオバキスミレにおける繁殖戦略の種内変異の解明 顕花植物の中には、蕾から開花し、主に送粉昆虫を介した他家受粉を行う「開放花」と、蕾のまま開花せずに自家受粉を行う「閉鎖花」を1個体内で形成する植物が、様々な分類群で知られている。本研究では開放花と閉鎖花を介した種子繁殖を行うオオバキスミレを対象として、北海道内の複数の生育地を対象として、集団維持に関する繁殖戦略の基礎的な調査を行った。その結果、開放花と閉鎖花の形成パターンが集団間で明瞭に分化しており、開放花と閉鎖花を形成する集団と、閉鎖花を全く形成せず、開放花のみを形成する集団が、それぞれ複数存在することが明らかになった。また、集団問で開放花の結実率を比較した結果、開放花のみを形成する集団の結実率が低い傾向が認められ、クローン繁殖が集団の維持に機能していることが示唆された。以上より、オオバキスミレ種内には、2タイプの繁殖戦略が存在することが明らかになった。 2. オオバキスミレに存在する繁殖戦略の二型の分子系統学的解析 オオバキスミレ集団には、2タイプの繁殖戦略(開放花・閉鎖花タイプと開放花・クローンタイプ)が存在する。本研究では、オオバキスミレに見られる2タイプの繁殖戦略が系統関係を反映しているかどうか明らかにするため、これまで調査を行ってきた北海道内の13集団を対象に葉のサンブリングを行い、核および葉緑体DNAを用いた分子系統解析を行った。その結果、核と葉緑体DNAの双方で開放花・閉鎖花タイプの単系統性が支持され、開放花・クローンタイプと遺伝的に分化していることが示された。さらに葉緑体DNAに着目すると、開放花・閉鎖花タイプよりも、開放花・クローンタイプのハプロタイプ多様度が高いことが明らかになった。これらの結果は、オオバキスミレ種内に存在する2タイプの繁殖戦略が、遺伝的に分化した系統群であることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外における生態学的調査から、オオバキスミレ種内において、開放花と閉鎖花の形成パターンが異なる2タイプの繁殖戦略が存在することを明らかにした。また分子系統学的アプローチから、異なる繁殖戦略を示す集団間で明瞭な遺伝的分化が認められ、2タイプの繁殖戦略が系統的に異なることを明らかにした。2年目はさらにこれら結果を踏まえ、オオバキスミレに存在する2タイプの繁殖戦略の進化的背景に迫る。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、北海道に生育する集団だけでなく、全国的にサンプルを収集し、調査および解析の範囲を広げることで、オオバキスミレの繁殖戦略と系統関係の比較解析を行っている。今後は、新たに分布域全体を網羅した集団遺伝学的な調査および解析を行う予定である。
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Research Products
(5 results)