2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J00241
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関澤 一之 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 多核子移行反応 / 不安定核 / 中性子過剰核 / r過程 / TDHF / 重イオン衝突 / 時間依存平均場理論 / 元素合成 |
Research Abstract |
本研究の最終的な目標は、現代物理学に残された未解決問題の一つである、「鉄より重い元素の起源」の解明に資することである。現時点では、それらの元素はr過程と呼ばれる、超新星爆発や中性子星の衝突に伴う高温・高密度の極限的な状況における早い中性子の捕獲とβ崩壊を繰り返す反応過程によって生成されたと考えられている。このr過程の詳細を理解するためには、反応過程に関与する中性子過剰核を実験的に生成し、その性質を調べることが必要である。しかし、どのようにすれば目的の中性子過剰な不安定核を実験的に生成できるのかということは、自明ではない。しかし近年、これまでに生成することができなかった中性子過剰な不安定核を生成する手段の一つとして多核子移行反応を利用する方法が提案され、注目を集めている。そこで我々は、原子核同士の衝突を核子自由度から微視的に記述することが可能である時間依存平均場理論(TDHF)を用い、多核子移行反応の微視的反応機構を明らかにし、目的の原子核を生成するための最適な条件を予言することを目標とし、研究を進めてきた。本研究は現実的に多核子移行反応を微視的に研究できる数少ない取り組みの一つであり、本研究がもたらす成果は元素の起源の解明が期待できる点で、大変意義深い。 まず本年度に我々が取り組んだことは、TDHF計算によって記述される多核子移行反応の定量性の検証である。我々は、ごく最近提案された粒子数射影法を用いることにより、TDHF計算によって多核子移行反応の断面積を求め、実験値との定量的な比較を行った。この計算により、我々は、TDHF計算によって多核子移行反応が微視的かつ定量的に記述できるということを、世界で初めて示した。この成果は論文誌、Physical Review C誌に掲載された[K. Sekizawa and K. Yabana, Phys. Rev. C 88, 014614 (2013)]。 更に、より定量的な実験値との比較を実現するために、移行核子数毎に生成核種を特定し、その励起エネルギーを求め、核子放出による脱励起の効果を評価する方法を考案した。この成果については、現在、論文に纏め、学術誌に投稿する準備を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、多核子移行反応によって目的の不安定核を生成する最適の条件を理論的に予言することであった。本年度に行った研究により、我々の手法が微視的かつ定量的に多核子移行反応を記述できることが示された。次年度に行う、系統的な反応計算により、当初の目的を達成することができると考えられるため、達成度は「②おおむね順調に進展している。」という評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的を達成するために、次年度には、様々な入射核・標的核に対する、入射エネルギーを変えた系統的な反応計算を実施することにより、目的の不安定核を生成するのに最適な条件が何かを探索する計算を行う。この計算結果の解析により、多核子移行反応の微視的反応機構に関する知見を得ることができると期待できる。改善すべき点としては、現時点では、反応に関与する核種が変形していた場合に行うべき「方向平均」を適切に扱えていないため、その効果を評価する方法を考案し、計算コードを実装する必要がある。この点については、次年度の比較的早い段階に取り組みたいと考えている。
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Research Products
(11 results)