2013 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能の霊長類間差異の分子基盤としてのポリシアル酸の探究
Project/Area Number |
13J00256
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
羽根 正弥 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | ポリシアル酸 / ST8SIA2/STX / ポリシアル酸転移酵素 / 進化 / 精神疾患 / 統合失調症 / 自閉症 / 気分障害 |
Research Abstract |
本研究はヒト神経疾患および生物種間に見出されるポリシアル酸(polySia)転移酵素ST8SIA2/STXの一塩基変異に着目し、その変異酵素の反応産物のpolySiaの構造と機能を解析することによって、その酵素がpolySiaの質と量をどのように制御するのか、またその制御されたpolySiaがどのように脳高次機能の違いを生み出すのかを解明することである。今年度は細胞レベルの解析としST8SIA2/STXの反応産物であるpolySiaの構造および機能解析、個体レベルの解析としてはノックイン(KI)マウスの作製を開始することが計画されていた。細胞レベルの解析としてpolySiaの構造および機能解析を行った。具体的にはまず、CHO細胞に分泌型のNCAM-Fcを導入して得たNCAM-Fc安定発現株を作製し、この細胞に対しヒト野生型、統合失調症型、チンパンジー型、マウス野生型、マウス-ヒト型ST8SIA2/STXを導入し各種ST8SIA2/STX由来細胞外分泌polySia-NCAM-Fc安定発現株を樹立した。そして各種ST8SIA2/STX由来細胞外分泌polySia-NCAM-Fcを調製し、神経作用因子との相互作用を表面プラズモン共鳴法により解析した。その結果、BDNF、FGF2に対する解析において統合失調症型由来polySiaではヒト野生型に比べ分子を保持する機能が低下していた。また、表面プラズモン共鳴法を用いて、NCAM上のポリシアル酸がBDNFおよびFGF2を直接結合することが今回はじめて証明された。また、proBDNF、BDNF、FGF2に対する解析においてチンパンジー型由来polySiaはヒト野生型と比較しでそれら分子を保持する機能が劇的に低下していた。一方でマウス野生型およびマウス-ヒト型由来polySiaで差は見られなかった。また、polySiaの化学的解析、免疫化学的解析から、統合失調症型、チンパンジー型では長さ、量ともに野生型よりも減少していることが明らかになった。一方でマウス野生型およびマウス-ヒト型由来polySiaでは長さ、量ともに大きな差は見られなかった また、個体レベルの解析としては野生型もしくはSTX-KOマウス(既存)に各種ST8SIA2/STXを子宮内エレクトロポレーション法を用いて導入するKIマウスの作製を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、細胞レベルの解析としてpolySiaの構造および機能解析、化学的、免疫化学的解析を行った。また、KIマウスの作製にもとりかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、昨年度に樹立した各種細胞を用いて、polySia-NCAMの細胞表面への発現機構の解明に取り組む。また、ST8SIA2/STXの発現および作用機構の解析にも取り組む。具体的にはCOS-7細胞を用いて膜領域を欠く可溶性の組換え体各種ST8SLA2/STXを調製し、NCAMに対するin vitro酵素活性測定を行う。この時、STXに対する、もう一つのpolySia転移酵素であるPSTによる影響に着目し、その量的効果および相互作用効果を明確化する。個体レベルの解析では引き続きKIマウスの作製を行い、確立された後、行動テストによりそれぞれの表現型を解析しST8SIA2/STXの動物種及び疾患による行動の違いの詳細を明らかにしていく。
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Research Products
(7 results)