2014 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能の霊長類間差異の分子基盤としてのポリシアル酸の探究
Project/Area Number |
13J00256
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
羽根 正弥 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポリシアル酸 / ST8SIA2/STX / 統合失調症 / 自閉症 / 双極性障害 / 一塩基多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症の罹患者からゲノムワイドな解析によって見いだされた4つの遺伝子型のST8SIA2/STXのプロモーターに関して、ヒト神経芽細胞種IMR-32を用いてプロモーター活性の測定を行った。その結果、コントロール群に比較し統合失調症患者群に高い割合で確認されたリスク遺伝子型では低頻度で確認された保護遺伝子型のおよそ3.6倍の高いプロモーター活性をもつことが示された。この結果は2006年にAraiらのグループの報告を支持するものとなった。他の2種の遺伝子型においてもそれぞれ保護遺伝子型の2-3倍と高い活性を示した。この2種はコントロール群および統合失調症患者群において顕著な差が見られなかった遺伝子型である。以上のことからプロモーター活性がある種の細胞において低く維持され統合失調症の発症リスクを低下させる可能性が示唆されたが、下流に存在するST8SIA2/STX遺伝子の発現および、産物であるpolySiaを解析することが重要である。次に、自閉症および双極性障害患者のST8SIA2/STX遺伝子のイントロン領域に存在する一塩基多型変異体に着目をした。ORF部分を持つコンストラクトに第4イントロンを挿入したコンストラクトを作製し、自閉症型および双極性障害型一塩基多型変異体を作製し、マウス神経芽細胞腫Neuro2aを用いて解析を行った。その結果、一塩基多型変異体では酵素の発現量が上昇し、産物であるpolySiaも増加している傾向が見られた。その結果は、未成熟メッセンジャーRNAおよびメッセンジャーRNAの量が野生型に比べ、一塩基多型変異体では増加していた。このため、今回未成熟メッセンジャーRNAが増加したという結果は、第4イントロン中の自閉症及び双極性障害型一塩基変異が未成熟メッセンジャーRNAの安定性を野生型のものよりも向上させた結果によると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統合失調症の罹患者からゲノムワイドな解析によって見いだされた4つの遺伝子型のST8SIA2/STXのプロモーターおよび自閉症および双極性障害患者のST8SIA2/STX遺伝子のイントロン領域に存在するSNPをもつ変異体に関する解析によりST8SIA2/STXの酵素量の増減という点において新たな知見が得られた。また、個体を用いた実験系においても予備的な実験ではあるが実験系が整ってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はマウスではなくヒトの細胞を用いた解析を中心に行うことでヒトの疾患由来のSNPsが本当にヒトで影響を及ぼすのかという点を見ていく。また、プロモーター領域の多型に関してそれらの変異がどの転写因子に作用するのかを明らかにする。さらに、マウスを用いた個体レベルでのST8SIA2/STXの変異の影響を見ていく予定である。
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Research Products
(13 results)