2013 Fiscal Year Annual Research Report
アリューシャン列島周辺海域における物理-動物プランクトンモデルの開発
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13J00271
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 類 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | アリューシャン列島 / 中規模高気圧性渦 / アラスカンストリーム / 粒子輸送実験 / 数値計算 / 動物プランクトン |
Research Abstract |
平成25年度は研究課題のうち、サブテーマ2「中規模高気圧性渦(アリューシャン渦)が動物プランクトンに与える影響」から研究を進めた。博士論文の一部である「2010年7月の西部アリューシャン列島南岸における中規模高気圧性渦が動物プランクトンに与える影響」について、渦内と渦外における物理環境を再評価した。渦内においては等密度面26.5σθ付近を境に上層に水温3.5℃から4.0℃の中冷水が、水深200mから500mにかけて比較的高温な4.0℃から4.5℃の中暖水が見られた。渦外においてはこのような中冷水が観察されなかったため、この水塊が夏季のアリューシャン渦の特徴的な水塊であることが分かった。アリューシャン渦は比較的暖かく、栄養塩が豊富なアラスカンストリームが東側から、中冷水がある西部亜寒帯循環が西側から流入・混合することにより、一次生産が高くなり、動物プランクトンとカイアシ類の個体数と油球蓄積が多く、発育も進むと考えられた。以上の成果は、2013年度PICES年次総会で口頭発表、2013年AGUでポスター発表、国際学術誌Joumal of Plankton Researchに受理・出版された。海洋中規模渦が生態系に与える影響に関しては、国内外で様々な研究が実施されているが、その多くは中規模渦が植物プランクトンに与える影響に関する研究であり、バイオマスとしても重要な動物プランクトンであるカイアシ類の分布や発育段階に海洋中規模渦が影響を与えていることを示したという点で、本研究は学術上大きな意義を持つと考えられる。サブテーマ1の「アラスカンストリーム流域における動物プランクトンの地理及び経年的な分布」については、博士論文の内容の一部を、2013年度海洋学会秋季大会で口頭発表した。2010年の渦の水塊の形成パターンを評価するために、AVISO衛星海面高度データとWOA09気候値データを解析し、中央水研の同化モデルFRA-ROMSを用いた粒子輸送実験を行った。アリューシャン渦は衛星及び気候値データを見る限り、アラスカンストリームの影響を受ける海域で発達していた。FRA-ROMSデータを解析すると、渦へは東側からのアラスカンストリームが渦の南を蛇行し、渦に流入していることが分かり、渦はアラスカンストリームの水塊を取り込みながら、発達すると示唆された。 本研究は今まで解明されていないアリューシャン渦の発達パターンを評価した点で学術上重要であると考えられる。以上の成果は2014年度海洋学会春季大会で口頭発表を行った。また、2010年7月に西部亜寒帯循環内で、2012年6月に西部アリューシャン列島南岸で観測した渦の解析を行い、2010年7月の渦と水塊形成パターンを比較を始めた。物哩一動物プランクトンモデルの開発にっいてて、参考文献の熟読及びモデル設定の準備を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は物理-動物プランクトンモデルの開発で基盤となる現場観測データ、気候値データ、物理同化モデルの解析及び数値実験に予想以上に時間を要し、物理-動物プランクトンモデルの開発まで進めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はアリューシャン渦の水塊形成パターンの解明を主に同化モテルを応用しながら評価し、早急に物理-動物プランクトンモデルの開発を開始する。受け入れ研究者及び共同研究者との打ち合わせ及びやり取りを増やし、内容の濃いものとし、さらなる研究の発展に努める。
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Research Products
(6 results)