2013 Fiscal Year Annual Research Report
コーヒー由来生理活性物質による運動時の骨格筋代謝活性化
Project/Area Number |
13J00300
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津田 諭志 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カフェイン / コーヒー / 運動 / 骨格筋 / AMPキナーゼ / 糖代謝 |
Research Abstract |
コーヒー由来生理活性物質であるカフェイン、カフェ酸、クロロゲン酸が、運動(筋収縮)時の骨格筋AMPキナーゼ(AMPK)活性化、及びインスリン非依存性糖輸送活性に及ぼす影響について検討を行った。ラットから滑車上筋を単離し、カフェイン(3mM)、カフェ酸(1mM)、クロロゲン酸(1mM)を含むa-MEM培地で30分間インキュベートし、最後の10分間培地に通電することでテタヌス収縮を惹起した。カフェイン、筋収縮の刺激によりAMPK活性化の指標となるAMPKaThr^<172>リン酸化が亢進し、刺激を併用することでそれぞれ単独の刺激よりもリン酸化が増強された。カフェ酸、クロロゲン酸は、収縮刺激によるAMPKリン酸化に影響を与えなかった。骨格筋AMPKにはa1とa2の2種類の活性サブユニットが存在し、カフェイン、筋収縮刺激によりa1、a2活性がともに亢進し、併用刺激ではいずれの活性化も単独刺激より増強された。さらに併用刺激では、エネルギー状態の指標であるATP、クレアチンリン酸含有量が、カフェイン、筋収縮単独の刺激よりも低下し、インスリン非存在下において糖輸送活性の増強が確認された。また、カフェイン(60mg/kg)を腹腔内投与し、麻酔下で坐骨神経に通電し収縮を惹起させる方法を用いて生体での検討を行った。カフェインの刺激時間は15分間とし、収縮刺激は最後の5分間通電を行った。刺激終了後に長趾伸筋を摘出し、AMPK活性、及び糖輸送活性を測定したところ、収縮時の骨格筋AMPK活性、インスリン非依存性糖輸送活性に対してカフェインによりin vitroと同様の変化が認められた。以上の結果は、カフェインが収縮時の骨格筋AMPK活性化を細胞エネルギー低下に依存するメカニズムを介して増強し、それに伴いインスリン非依存性糖輸送活性が並行して増強する可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はカフェインが収縮時の骨格筋AMPK活性化、及びインスリン非依存性糖輸送活性に与える影響について、ラット単離骨格筋インキュベーション系を用いた実験系において明らかにすることを目的としていたが、年度半ばにしてこの目的を達成し、引き続き、当初第2、3年度に予定していたより生理的な実験条件、すなわちカフェインをラット生体に投与して筋収縮を惹起する実験系を用いた研究に着手し、単離筋での実験結果と同様の結果が生体においても得られることを明らかにした。一方、カフェインが収縮時の骨格筋Akt活性化、及びインスリン依存性糖輸送活性に与える影響については、カフェインが筋収縮誘導性Akt活性化を阻害する傾向を単離筋での実験系において確認した。以上のことから、研究がおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
カフェインが収縮時の骨格筋AMPK活性化、及びインスリン非依存性糖輸送活性を増強する結果を受けて、その活性変化がどのような分子メカニズムを介して生じるのかに関してより詳細に検討を行う。具体的には、AMPKの上流分子(LKB1、Ca^<2+>/calmodulin-dependent protein kinase kinase、protein phosphatase 2C)や骨格筋の細胞内Ca^<2+>濃度の指標であるCa^<2+>/calmodulin-dependent protein kinase IIに焦点を当てて解析する。また、カフェインと筋収縮の併用刺激がAktに関連する生理作用(インスリン依存性糖輸送促進、グリコーゲン合成促進など)に及ぼす影響についても順次検討していく予定である。
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Research Products
(8 results)