2014 Fiscal Year Annual Research Report
炭素‐炭素結合形成を伴う還元的二酸化炭素固定化反応の開発
Project/Area Number |
13J00320
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野木 馨介 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 二酸化炭素 / カルボキシル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は本年度、遷移金属触媒と、還元剤として亜鉛粉末を用いた炭素-素結合形成を伴う二酸化炭素固定化反応の開発に取り組み、アルキンのカルボキシ亜鉛化反応を見出した。 炭素-炭素不飽和結合に対する二酸化炭素を用いた付加型のカルボキシル化反応は二酸化炭素由来のカルボキシル基ともう一つの官能基を一挙に導入できる魅力的な手法である。しかしながらそれらの多くは水素原子、あるいは還元剤として過剰量用いる有機亜鉛試薬由来のアルキル基やフェニル基に限定され、さらなる変換を可能とする官能基の導入を伴う付加型のカルボキシル化反応が求められていた。ごく最近、所属研究室と他のグループから独立に、アルキンや1,2-ジエンに対するシラ、あるいはボラカルボキシル化反応が報告されたが、単離、精製を行わなければそれらの生成物を檜山カップリング反応や鈴木・宮浦カップリング反応にふすことはできなかった。さらに上述の反応においては還元剤としてシリルボランやジボランを用いるため、化学量論量のホウ素化合物が副生成物として生じ、原子効率の面からもさらなる改善が求められていた。 本研究において見出した遷移金属触媒と還元剤として亜鉛粉末を用いるアルキンのカルボキシ亜鉛化反応はアルキンに対してカルボキシル基と同時に亜鉛が導入され、アルケニル亜鉛種が生じる反応である。アルキンに対して亜鉛と水素原子以外の原子とを導入する反応はこれまで例がなく、学術的にも非常に興味深い分子変換である。また生じたビニル亜鉛種に対してワンポットでの根岸カップリング反応や分子状ヨウ素を用いたヨウ素化反応を試みたところ、対応するカップリング体やヨウ素化体を効率よく得ることができた。さらに、亜鉛粉末は還元剤としてだけでなく、アルキンに対して導入される役割も有しており、本反応は副生成物の排出を伴わない原子効率に優れた反応である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究に着手した当時は、二酸化炭素を用いた炭素-炭素結合形成を伴うカルボキシル化反応をターゲットとし、遷移金属触媒と還元剤として亜鉛やマンガンを組み合わせた手法を用いることで安息香酸誘導体などの開発手法を確立し、成果を上げた。 しかしそれらの反応では化学量論量の金属塩が廃棄物として生じるというあらがえない課題が残存していた。この課題に対し私は、不飽和炭化水素化合物に対して二酸化炭素と同時に金属亜鉛由来の亜鉛原子を導入するという解決法を提示し、適切な遷移金属触媒を用いることでそれを達成した。 これは研究開始当初には想定していなかった進展であり、当初の計画以上に研究は進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度私は、遷移金属触媒存在下、二酸化炭素と粉末亜鉛を用いた不飽和炭化水素化合物に対するカルボキシ亜鉛化反応を報告した。 今後は、この新たな手法を他の基質や多成分カップリングに応用し、合成化学的にさらに高次な手法へと展開したいと考えている。
|
Research Products
(4 results)