2013 Fiscal Year Annual Research Report
社会的側面から野生動物問題の解消を目指す順応的モデルケースの構築
Project/Area Number |
13J00338
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
桜井 良 横浜国立大学, 環境情報研究院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 獣害対策 / 住民意職 / モデル事業の評価 / 国際比較 / アンケート調査 / 実験群と対照群 / 栃木県 / 住民参加型の活動 |
Research Abstract |
2013年度の研究の一つ目の成果は、当研究課題である栃木県自然環境課が実施している「獣害対策モデル地区事業(以下モデル事業)の効果測定について、その成果を論文"Assessing the impact of a wildlife education program on Japanese attitudes and behavioral intentions"にまとめ、国際学術雑誌(Environmental Education Research/査読付き)に投稿し、受理されたことである。内容は、モデル地区(実験群)と近隣地区(対照群)の全世帯へのアンケート調査の結果をまとめたもので、モデル地区の住民の獣害対策を実施することへの自信が近隣地区に比べ有意に高いことを示し、モデル事業が住民に与える潜在的な影響力を明らかにした。この研究結果は、これまで詳細な効果測定が行われることなく実施されてきた獣害対策事業の地区及び住民に与えるインパクトを、その内容と程度を初めて明らかにしたものであり、事業実施者である県にとっては今後の事業や活動内容を改善する上で重要なポイントが明確になり、政策に直結する成果となった。 二つ目の成果は、当研究の成果を国内外の学会及び研究会で発表したことである。具体的には、2013年10月に米国メリーランド州で行われた北米環境教育学会で、当研究の成果"Assessing the impact of a wildlife education program in Japan"を発表し、海外の研究者と意見交換をし、今後の研究の改善点などを議論した。日本の事例を海外で報告したことで、日本における獣害対策や普及啓発の成果や課題が、欧米の事例と比較しどのように異なるのか、国際比較も含め議論することができ、同様の問題を抱える世界中の研究者や行政担当者にとって参考になる成果を示すことができた。3つ目の成果は、モデル事業を実施している栃木県自然環境課の担当者及びモデル地区の住民と定期的に議論し、今後の方向性に関する検討ができたことである。研究の成果を随時共有し、意見交換をすることで、今後どのように住民参加型の活動を改善していけばよいか、またどのような研究をしていくことが有効かなど、調査結果を踏まえて議論している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究課題の成果を査読付論文として発表し、国内外の学会で報告することができており、研究は計画以上に成果を出していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、栃木県内でこれまでアンケート調査を実施してきた全ての地区のデータを統合し、モデル地区事業が住民や地区に与えた影響を、マクロなスケールから、特に住民の行政の政策への評価や対策を行うことに関する住民の主体性に着目し、定量的に分析する。また、アンケートの自由回答の箇所で住民が記述した文章をテキストマイニングの手法を用いて分析することで、アンケートの形式的な回答項目では把握できない住民の感情を定性的・定量的に分析する。これらの分析をすることで、モデル地区事業の社会的側面からの総合的な評価を実施する。
|
Research Products
(4 results)