2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本固有イワカガミ属における環境適応に伴う種分化機構の解明
Project/Area Number |
13J00420
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東 広之 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 種分化プロセス / イワカガミ属(Schizocodon) / 気候環境 / イワウメ科 / 系統解析 / 生育地隔離 / 景観遺伝学 / 屋久島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本固有草本であるイワカガミ属(イワウメ科)が環境適応によって種分化した過程を明らかにすることを目的としている。イワカガミ属は、種ごとに地域的な「すみわけ」をしていることが特徴である。イワカガミ属と同様に、「日本海側」と「太平洋側」で種や亜種がすみ分けている植物群は多く知られているので、イワカガミ属の環境適応による種分化過程を明らかにすることは、日本の植物の多様性が生まれた過程を考察することにつながるので、とても有意義である。 本年度の成果は、次の4つにまとめられる。 1. イワウメ科の系統解析を行うことで、イワカガミ属が単系統群であることを示した。イワカガミ属の単系統性を示すことは、本研究の前提であるため、重要であった。本内容は、前年度から実施してきた研究であり、研究成果をPlant Systematics and Evolution誌に掲載した。 2. 屋久島産イワカガミ属植物であるヒメコイワカガミについて分類学的再検討を行い、ヒメコイワカガミは、イワカガミの変種Schizocodon soldanelloides var. minimusとすることを提案した。本内容は、前年度から実施してきた研究であり、研究成果をActa Phytotaxonomica et Geobotanica誌に掲載した。 3. イワカガミ属の集団動態を推定するため、進化モデルを適用した。その結果、イワカガミ属の種分化時には遺伝子流動がないことが示され、種分化は更新世中期ごろであると推定された。 4. 景観遺伝学的手法により、イワカガミ属の遺伝的距離と気候的距離に有意な相関があることを示した。このことは、イワカガミ属の各種の真正性の維持に気候環境の違いが寄与していることを示している。 (前項・本項の成果を合わせ、学術雑誌に投稿)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度、当初の計画以上に研究をすすめることができた。当初の計画では、イワカガミ属のニッチが異なることをNiche divergence解析のみにより示す計画であった。しかし、景観遺伝学的解析を追加することで、ニッチが異なることを示すだけにとどまらず、気候環境の違いがイワカガミ属の進化過程に貢献していることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究で、イワカガミ属の進化過程に、日本海側と太平洋側の気候環境の違いが影響していることを示した。しかしながら、イワカガミ属2種が、実際に、生育地の気候環境に適応した生理メカニズムを獲得してきたことまでは示せていない。そのため、今後、栽培実験等によって、イワカガミ属の各種が自生地に適応していることを示す必要がある。ただし、本属は、栽培が難しいとされる植物なので、安定して栽培できる技術を開発することが事前に必要とされる。
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Research Products
(5 results)