2014 Fiscal Year Annual Research Report
S期における紫外線DNA損傷応答に対する転写因子Foxo1の新規機能の解明
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13J00452
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金子 悠太 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンパク質間相互作用 / タンパク質DNA間相互作用 / 遺伝学的解析 / 紫外線DNA損傷 / 1本鎖DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インスリンシグナル伝達経路の最下流に位置するフォークヘッド型転写因子FOXOの長寿命や抗老化の根底にある分子メカニズムを解明するため、培養細胞と線虫を用いた解析を中心に遂行されている。当研究室では、DNA損傷の蓄積が老化の一因であることに着目し、DNA損傷とFOXOの関連を検証し、4つのFOXOファミリー(FOXO1, FOXO3, FOXO4, FOXO6)の中で、FOXO1のみが紫外線に対して保護的に働くこと、またこの現象はDNA合成期(S期)において特異的に引き起こされることが明らかになっている。当該年度は特に、FOXO1がDNA損傷に関与する詳細な分子メカニズムを目指した。S期の紫外線DNA損傷は複製反応を停止させ、1本鎖DNAの露出を引き起こす。現在、FOXOが関与することを予想している損傷乗り越えDNA複製機構(TLS)はこの複製の停止を回避する機構であるため、TLSに関与する因子はこの1本鎖DNA上に集積し、機能する。そこで、FOXO1と1本鎖DNAとの結合性を検証した結果、DNA損傷に関与する特定のタンパク質の存在下でFOXO1が1本鎖DNAに結合することが明らかとなった。次に、線虫においてもこのタンパク質とFOXO1の相同遺伝子であるDAF-16が結合することが明らかとなり、このタンパク質と相互作用できないDAF-16の変異体を作製した。線虫において、DAF-16欠損変異体は紫外線照射後に顕著な成長遅延を見せるが、野生型DAF-16をレスキューした線虫はこの成長遅延が完全に回復した。一方で、タンパク質間相互作用欠失変異体のレスキュー線虫は、成長の遅延がレスキューされなかったのに対し、転写活性化能欠損DAF-16のレスキュー線虫は成長遅延が回復した。以上の結果は、FOXOとDNA損傷因子との相互作用は損傷部位でのFOXOの機能に重要で有り、転写を介さないFOXOの新たな機能が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、長寿命や抗老化に関与するフォークヘッド型転写因子FOXOとDNA損傷応答機構の解明を目的にしている。この課題において、培養細胞における生化学的、細胞生物学的解析と線虫を用いた遺伝学的解析を行い、培養細胞で明らかにした分子メカニズムを線虫個体にフィードバックすることを目指している。 研究を始めるにあたり、FOXO1がDNA損傷応答に関与する因子と複合体を形成するという当研究室の先行解析に着目し、「転写因子であるFOXO1がDNA修復因子と相互作用することで直接的にDNA損傷応答を制御する」という作業仮説を立てた。昨年度までに、FOXO1が紫外線に応答して核内に応答することや、紫外線に応答したDNA損傷因子の挙動を解析する実験手法を確立してきた。しかしながら、その相互作用のDNA損傷応答における意義の解明や線虫を用いた個体レベルの解析には至っておらず、分子メカニズムの本質的な理解には不十分であった。 そこで、昨年度、FOXO1とDNA損傷応答因子の相互作用の意義を解明することを目的に、始めに生化学的手法を用いた解析を中心に検証を行った。その結果、DNA損傷に関与する特定のタンパク質の存在下でFOXO1が1本鎖DNAに結合することが明らかとなり、DNA損傷応答におけるFOXO1の新たな機能が示唆された。さらに、FOXO1の線虫における相同遺伝子であるDAF-16の欠損変異体を用いた遺伝学的解析を行い、培養細胞で見られた転写を介さない新たな機能が線虫に保存されていることを見出した。しかしながら、DAF-16の機能に決定的な必要な因子と今回の現象の関連は検証しておらず、DAF-16とこの因子が遺伝学的に相互作用するかを明らかになっていない。培養細胞を用いた解析により、分子メカニズムの解明に至った点は評価出来るが、線虫においての保存性を十分に証明するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時の計画通り、本研究課題は現在論文投稿中であり、リバイス実験への対応を予定している。特に、現在までに明らかにした分子メカニズムの線虫への保存性という観点からその準備を進める予定である。具体的には、FOXO1の線虫における相同遺伝子であるDAF-16と関連が予想される因子についてDAF1-16との遺伝学的相互作用を検証する。また、遺伝学的解析による分子メカニズムの検証に加え、今回見出した現象が抗老化作用と関連するかを検証する予定である。DNA損傷応答と老化の関連は様々な種で報告されているが今回FOXO/DAF-16が関連すると予想される損傷乗り越えDNA複製と老化との関連はほとんど明らかとなっていない。そこで、線虫を用いた寿命測定や運動量の計測を行うことで、FOXO/DAF-16の抗老化作用における損傷乗り越えDNA複製の影響を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(2 results)