2013 Fiscal Year Annual Research Report
スタチンでの横紋筋融解の発症機構及び骨格筋におけるHMGCoA還元酵素機能の解明
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13J00607
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大﨑 芳典 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | HMG-CoA還元酵素 / スタチン / 低分子量Gタンパク質 / 骨格筋 / 横紋筋融解症 / オートファジー / アポトーシス / ネクローシス |
Research Abstract |
Human alpha skeletal actin (Acta1)をプロモータとしてCreリコンビナーゼ遺伝子を発現するActal-CreTgマウスとHMG-CoA還元酵素floxedマウスを交配し, 骨格筋特異的HMG-CoA還元酵素ノックアウトマウス(以下mKOマウス)を作成した. mKOマウスは対照群と比較して有意に身体が小さく体重が軽い上, 自発運動量と持久力が低かった. また, mKOマウスのオスはその約9割が9-10週齢で衰弱死する現象が見られた. 現在のところこの死因は不明である. 骨格筋の形態は, 筋線維の壊死・大小不同, 筋再生を示す中心核線維がみられ, 間質にマクロファージの集籏が目立ち, 筋ジストロフィでみられる筋障害・再生像に類似していた. また, 筋逸脱酵素であるCKが高値であり, HMG-CoA還元酵素阻害剤であるスタチンによる筋障害を模していると考えられた. mKOマウスの骨格筋組織では非特異的エステラーゼ染色陽性の空胞化筋線維, LC3-IIおよびp62の蛋白発現量の増加を認め, オートファジー異常が強く示唆されている. 他方, 筋線維細胞骨格蛋白の異常, ユビキチン・プロテアソーム系亢進を伴う萎縮を示唆する所見は認められず, アポトーシスに関与するcleavedCaspase3は免疫染色およびウエスタンブロットにて対照群と差がなく, in vitroにて報告されているアポトーシスを示唆する所見は認められなかった. これらの骨格筋障害はメバロン酸の経口投与にて完全に消失し, メバロン酸下流の代謝産物の減少が筋障害の原因と考えられた. エレクトロポレーション法による骨格筋でのRheb-GFP発現実験では, mKOマウスの骨格筋においてGFP蛍光ドットの発現数が減少しており, 骨格筋内での低分子量Gタンパク質のプレニル化障害が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は骨格筋特異的HMG-CoA還元酵素ノックアウトマウス(以下mKOマウス)のフェノタイプの詳細な解析とメバロン酸下流の代謝産物の不足が骨格筋障害の原因であることの証明が主な目的であり, これらは上述の通り達成することができたと考えている. また, 近年オートファジー異常が骨格筋障害の原因となることが報告されているが, 従来in vitroのスタチンを用いた実験系で報告されていたアポトーシスを示唆する所見がmKOマウスでは認められず, オートファジー異常を強く示唆する所見が得られたことは新たな発見と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
近年, オートファジー異常は骨格筋障害の原因として新たに注目され研究が進んで来ており, 骨格筋特異的HMG-CoA還元酵素ノックアウトマウス(以下mKOマウス)においてもオートファジー異常が強く示唆されていることから, 下記の方向で研究を推進していく方針である. 1, GFP-LC3TgマウスとmKOマウスの交配によりGFP-LC3を過剰発現したmKOマウスの作成, tfLC3plasmidのエレクトロポレーションにより, どのタイプのオートファジー異常が発生しているかを特定する. 2, 現在, メバロン酸下流の代謝産物のうち, ファルネシルピロリン酸(Rhebなどのファルネシル化に関与)・ゲラニルゲラニルオール(代謝により産生されるゲラニルゲラニルピロリン酸がRac1などのゲラニルゲラニル化に関与)の投与では骨格筋障害の改善は認めず, HMG・CoA還元酵素の欠損による筋障害を改善させるための物質が特定できていない. このため, 上述のメバロン酸下流代謝産物が関与する低分子量G蛋白質の活性型をエレクトロポレーションにて骨格筋で過剰発現させ, mKOマウスの筋障害がレスキューできるか検討する. 3,1にてオートファジー異常の存在および様式が確定すれば, ラバマイシンなどの薬剤やplasmidのエレクトロポレーションにより, オートファジーの抑制もしくは活性化を行い, 骨格筋障害がレスキューできるか検討するとともに, mKOマウスでのオートファジー障害に関わる上流因子の同定を行う.
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