2014 Fiscal Year Annual Research Report
スタチンでの横紋筋融解の発症機構及び骨格筋におけるHMGCoA還元酵素機能の解明
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13J00607
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大﨑 芳典 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | HMG-CoA還元酵素 / スタチン / 骨格筋 / 横紋筋融解症 / オートファジー / ライソゾーム / ライソゾーム蓄積病 / 低分子量Gタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋特異的HMG-CoA還元酵素KOマウス(以下mKOマウス)において蛍光タンパクを付与した低分子量Gタンパク質Rab5・Rab7・Rab11をin vivoで発現させ画像評価を行ったところ,early endosomeを示すRab5,recycling endosomeを示すRab11は対照群と差を認めなかったものの,late endosomeを示しオートライソゾーム(以下AL)の形成に関与すると報告されているRab7のみ,mKOマウスでのpunctaの形成が著しく減少しており,プレニル化不全によるRab7の機能障害がmKOマウスには存在すると考えられた. また,mKOマウスでのオートファゴソームの評価を行ったところ,蛍光顕微鏡観察にてGFP-LC3 punctaが増加, 酸性環境下でのGFPの消光を利用してALのpHを評価するRFP-GFP-LC3 plasmidによる評価ではRFP単独陽性のpunctaの増加を認めALの産生亢進もしくは内部酸性化後の分解障害のいずれかが存在すると考えられた. 他方,オートファジーの最も強力な調節因子であるmTORC1の機能は,リン酸化mTORC1ならびにmTORC1下流のエフェクターであるS6とリン酸化S6が増加していたことから,活性化していると考えられ,上述のデータとあわせてALの分解障害が示唆された. オートファジーの調節による筋障害の改善を目的とし,mTORC1の活性低下を通じオートファジーを亢進させるラパマイシンの投与,逆にFoxo3の不活性変異体のエレクトロポレーションによるオートファジーの更なる抑制,の2通りの方法を試行したが,いずれも筋障害の改善を示唆する結果は得られなかった. また,コレステロール生合成の律速段階酵素であるHMGCRのKOにも関わらず,mKOマウスで筋肉中のコレステロールの増加が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初予定していた,骨格筋特異的HMGCR KOマウス(以下mKOマウス)の骨格筋におけるin vivoでのオートファジーの状態評価・オートファジーへの干渉によるレスキュー実験は概ね完遂できたと考えられる.他方で,mKOマウスの骨格筋への,ラパマイシンやFoxo3の不活性変異によるオートファジーの上流制御での筋障害の改善は,当初期待していたものと異なりいずれもmKOマウスにおける骨格筋障害の改善には至らなかった.また,コレステロールの合成酵素であるHMGCRのKOマウスであるにも関わらず,逆にmKOマウスで骨格筋中のコレステロールが増加しているという結果であった. 上記の点で以前に仮説として考えていたものとは違う実験結果となっているが,これまでのデータから「ライソゾーム機能異常」を強く示唆する所見が得られており,この仮説の実証,および遺伝子操作によるライソゾームの機能増進を通じてmKOマウスの骨格筋の異常所見の改善が認められれば,当初の予定通り論文の形として結果を出すことができるものと考えます.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方針として, ・Doxycycline inducible Acta1-Cre Tgマウスとの交配で作成した骨格筋特異的HMGCRKOマウス(以下mKOマウス)を用いて,マウス個体レベルでの筋障害のタイムコースの評価ならびに筋障害の発生前にオートファジーやライソゾームの異常など,ライソゾーム蓄積病に合致した所見を呈しているかの検討 ・遊離コレステロールの蓄積は高い細胞毒性があることから,LDL受容体KOマウスとmKOマウスの交配により外部からのコレステロール供給を減じ,mKOマウスにおいて骨格筋での遊離コレステロールの減少が筋障害の改善につながるかどうかの検討 ・EGFR分解assayやlysosensorを用いて,ライソゾームのもつ分解機能や酸性化度合いの評価 ・TFEBの過剰発現を用いたライソゾームの活性化により,既報のライソゾーム蓄積病と同様に蓄積産物の減少がみられるか,また筋障害の改善作用があるかどうかの検討 を行い,2015年度中に論文として報告することを目標とする.
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