2013 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ黄体の形成機構に関する研究:黄体細胞の増殖および分化調節メカニズムの解明
Project/Area Number |
13J00612
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉岡 伸 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 黄体形成 / Hippo sinal / YAP1 / 細胞密度 / プロジェステロン / エストロジェン |
Research Abstract |
近年、Hippo signalが細胞の密度に応じて細胞増殖およびアポトーシスを制御することで器官形成に重要な役割を果たすことが示されてきた。細胞が低密度の場合は転写共役因子であるYAP1が核内へ移行し、転写因子と結合して細胞増殖など様々な作用を引き起こす。一方、細胞密度が高くなるとYAP1は核外において分解される。我々はこのYAP1の特性に注目し、発情周期を通じたウシ黄体におけるYAP1発現を検討した。その結果、排卵直後の黄体においてYAP1核内発現が高く、発情周期が進行するにしたがってYAP1核内発現が低下した。黄体は形成直後では内側に腔があり、比較的低密度であると考えられる。従って、黄体形成においてもHippo signalおよびそのエフェクターであるYAP1が重要な役割を果たすことが示唆された。次に黄体ステロイド合成細胞(LSC)において、YAP1がどのような役割を果たしているのかを検討するために、YAP1発現ベクターの構築を試みた。YAP1発現ベクターの構築は完遂できたが、LSCへの遣伝子導入効率が低く、リポフェクション法では実験を進めることができなかった。そこで、次の実験では、細胞密度がYAP1の発現を調節するという特性を活かして、培養皿に低密度および高密度でLSCを播種し、LSCが分泌する主なステロイドホルモンであるエストロジェン(E2)およびプロジェステロン(P4)産生量を検討した。その結果、P4分泌は細胞の密度の違いの影響は受けなかったが、E2分泌が低密度環境下において、高密度環境下と比較して有意に高くなることを見出した。以上の結果より、YAP1は黄体の活発な成長期である排卵直後の黄体で核内発現が高くなっており、黄体の形成を調節する可能性が示された。また、排卵直後の黄体におけるE2分泌が高いこと、LSCを低密度で培養することによりE2分泌量の高くなることから、YAP1はE2分泌を介して黄体の成長に寄与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
YAP1遺伝子導入が昨年度の一番の目標だったので、それが達成できなかったためやや遅れているとした。 本年度からは、遺伝子導入などのノウハウをたくさん持つ研究室に異動して研究に励む。
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Strategy for Future Research Activity |
問題点はYAP1遣伝子導入がうまくいかなかったことである。本年度はより分子生物学的手法に詳しい研究室に移り、更なる研究の遂行を目指して研究に励む。また、いずれにしても遺伝子改変動物を用いた卵巣機能に及ぼすHippo signalの影響についても調べる必要があるため、本年度はそこに向けた準備も進めていきたい。
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Research Products
(3 results)