2013 Fiscal Year Annual Research Report
リチウムイオン内包フラーレンを用いた酸化還元複合光触媒システムの構築
Project/Area Number |
13J00627
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川島 雄樹 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC)
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Keywords | フラーレン / クロリン / 超分子 / 電荷分離 / イオン間相互作用 / 触媒 / エレクトロカップリングターム / マーカス理論 |
Research Abstract |
リチウムイオン内包フラーレンは分子自体がカチオンであるため、電子求引性置換基の導入を行わなくても電子受容特性が向上している。またこのカチオンはアニオン性ポルフィリンと強いイオン性相互作用により安定な超分子を電子移動反応に有利な極性溶媒中で形成できる。この超分子内での光電子移動により長寿命の電荷分離状態が得られる。 平成25年度はアニオン性クロリンを電子ドナーとした電荷分離システムの構築を行った。この電荷分離システムにおいて長寿命の電荷分離状態を得るために小さなエレクトロカップリングタームを持つ分子設計を行った。小さなエレクトロカップリングタームは電子ドナーとアクセプター間の軌道の重なりが小さいことを意味し、マーカスの電子移動理論によれば、長寿命の電荷分離状態を与えることが出来ると考えられる。エレクトロカップリングタームを小さくするためにリチウムイオン内包フラーレンのLUMOとアニオン性クロリンのHOMOの距離ができるだけ遠くなるように設計した。アニオン性クロリンはπ平面から離れた位置にカルボキシル基を有し、そこにリチウムイオン内包フラーレンがイオン間相互作用によって結合する。この超分子錯体の電荷分離寿命は170μsと非常に長寿命であった。またエレクトロカップリングタームは0.066cm^<-1>であり、フラーレンとクロリンを共有結合によって連結した分子の6.8cm^<-1>よりも非常に小さな値となった。このように本研究では煩雑な合成を行うことなく、両者を混合するだけで長寿命電荷分離状態を与える超分子錯体を得ることが出来た。この成果はThe Journal of Physical ChemistryCに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アニオン性クロリンを電子アクセプターとして用いることにより、当初の目的である長寿命の電荷分離状寿命を有する超分子系の構築に成功している。アニオン性クロリンを用いた超分子の電荷分離寿命はアニオン性ポルフィリンを用いたものより短いが「小さなエレクトロカップリングターム」という新たな設計指針を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
リチウムイオン内包フラーレンを用いた酸化還元複合光触媒システムを構築し、太陽エネルギーを利用して効率よく過酸化水素などを製造するためには、電荷分離状態生成を高い量子収率と長寿命で得る事が不可欠である。そのため、より高い量子収率と寿命を有する電荷分離システムの構築を引き続き行う。その設計指針としては、現段階のポルフィリンやクロリンとは異なる吸収波長を有するアニオン性光増感剤との組み合わせを検討する。
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Research Products
(9 results)