2013 Fiscal Year Annual Research Report
ポピュラー音楽のライヴ空間における「客席」の文化史
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13J00661
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
高橋 聡太 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ポピュラー音楽研究 / 文化史 / 芸術学 / メディア論 / オーディエンス論 / 文化研究 |
Research Abstract |
本研究<ポピュラー音楽のライヴ空間における「客席」の文化史>は、ライヴ・パフォーマンスをとりまくコンテクストの変容が、上演形式と観客の所作にどのような影響をあたえたのかをあきらかにするものである。本年度は、1960年代中頃に起こったロック・ミュージックの台頭を分水嶺とし、1970年代以後のロック公演における観客の動静を論じる研究発表と、ロック以前の来日公演全般に関する文献調査と公演情報のアーカイヴ化を行い、ロック前後の連続と断絶を検討した。 ロックに関する研究の成果は、ロック公演において顕著な「スタンディング」と呼ばれる形式が日本でどのように広まったのかを論じた「Standing on the Verge : A Shift in Japanese Crowd Culture from Seat to Floor」をスペインのオビエド大学にて開催された国際ポピュラー音楽学会第17回大会にて、またロック公演でしばしば見られる観客の暴力的行為に着目した「Where the Violent Things Are : Cultural History of Japanese Rock Crowds」をシンガポール国立大学にて開催されたIACSの大学院生むけ会議にて、それぞれ口頭で発表した。 ロック以前の来日公演の調査は、雑誌や新聞に掲載された公演情報のアーカイヴ化を中心に進めた。1950~1960年代を対象とし、来日したミュージシャンやバンド・公演の会場と日程・チケット代・席種といった情報を集積中である。これによって、これまで漠然としか言及されてこなかった来日公演の量的な変化を実証的に検証することを目指す。また、この時代に重要な役割を果たした<呼び屋>と称されるプロモーターの活動に着目した口頭発表「呼び屋と聴衆――戦後日本のポピュラー音楽産業における招聘コンサートの文化史」を東海大学高輪キャンパスにて開催されたコンテンツ文化史学会2013年大会にて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポピュラー音楽文化におけるロックの役割については、1960年代後半~1980年代までに起こった主要な事例を網羅することができた。また、1950~1960年代のコンサートに関しても公演情報のアーカイヴ調査が順調に進んでおり、来日公演数の変化が概括するに十分なデータが集まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は戦後の来日公演と観客に焦点を絞って調査を進める。これまでの研究では観客の質的変化が顕著に見られる事例として、ロック公演で会場から椅子が取り払われ「スタンディング」に至る経緯に着目していた。しかし、調査を進めるなかで観客の騒がしい行動の是非に関する議論は戦前から続く様々なポピュラー音楽文化間で絶えず紛糾していることが自明となった。また、1950年代の上演形態には音楽の実演が映画上映の手前に「アトラクション」として披露されていた戦前の文化からの連続が見られ、これまで戦前と戦後で二分されてきたポピュラー音楽史を再検討する上でも重要な事例が散見する。次年度は戦前からの連続性を念頭に置いた上で、1950年代から60年代にかけて起こった技術的変化をふまえつつ観客文化がいかなる変容を遂げたのかを調査する。
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