2014 Fiscal Year Annual Research Report
プレート収束帯における地殻内流体に伴う物質移動メカニズムの時空間解析
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13J00715
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東野 文子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 塩水 / 大陸衝突帯 / 変成岩 / 物質移動 / 南極 / セール・ロンダーネ山地 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究成果を踏まえ、東南極セール・ロンダーネ山地中央部に産する、片麻状構造を切るように発達するザクロ石―角閃石脈を含む、ザクロ石―斜方輝石―角閃石片麻岩を詳しく調べた。この脈の形成プロセスを調べたところ、角閃岩相高温部で外部から元素の添加を伴って形成した脈であることが分かった。脈から離れるにつれて、角閃石および黒雲母の塩素濃度は減少し、角閃石中の K 濃度も減少する。さらに、斜長石のNaに富むリムも薄くなることから、NaCl, KClの添加が示唆される。 次に、脈の形成に伴い動いた元素の制約を行った。まず、元素の添加・溶脱を議論するために必要な、不動元素を選定した。LA-ICPMSを用いた構成鉱物の局所微量元素分析、ジルコンのU-Pb年代測定、EPMAを用いた微細組織の観察を用い、Zrを不動元素として選定することの妥当性を示した。Zrを不動元素とする過程は、国際誌に論文を投稿し、現在査読中である。 Zr を不動元素として選定した結果、ザクロ石―角閃石脈の直近の壁岩部分では、Li, Cu, Rb, Ba, Pb, Uが添加されていることが分かった。これらの元素は、メルトよりも流体相に入るとされることから、脈は塩水流入によって形成されたと示唆される。また、構成鉱物の局所微量元素分析を行ったところ、全岩化学組成では添加されていると認められない元素も、脈からの距離に応じて徐々に濃度が上昇・減少する傾向があることが分かった。物質移動を扱う先行研究では、添加・溶脱した元素に着目して、移動成分を制約するものが多く存在する。しかし、本研究で得られた、全岩化学組成分析と鉱物の局所分析結果は、元素の「移動」は、添加・溶脱が認識される元素に留まらず、より大規模に起きており、物質移動の解明の複雑さを示すものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、塩水流入に伴う物質移動を明らかにすることを目標とし、重点的に研究を行ってきた。当初の見込み以上に、元素の添加・溶脱を議論する過程で必要となる、不動元素の選定に多大な時間を費やした。しかし、この不動元素の選定は、後の議論に重大な影響を及ぼす上、論文として投稿するに至る成果を得た。この結果をもとに、来年度もさらなる研究の発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度選定した不動元素をもとにして、塩水流入に伴う元素移動に関する議論を完成させる。添加・溶脱した元素に加え、移動したことが明らかな元素に関して、岩石中に痕跡を残す素過程の理解とともに、現象解明に臨む。
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[Presentation] Garnet-hornblende vein formation and mass transfer by brine infiltration during upper amphibolite facies metamorphism: A case study from Brattnipene, Sør Rondane Mountains, East Antarctica2015
Author(s)
Higashino, F., Kawakami, T., Tsuchiya, N., Satish-Kumar, M., Ishikawa, M., Grantham, G.H.
Organizer
International Colloquium on Metamorphic Evolution and Asian Continental Growth
Place of Presentation
Fukuoka
Year and Date
2015-02-14 – 2015-02-14
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