2014 Fiscal Year Annual Research Report
金属クロリン二量体を用いた高効率触媒システムの構築
Project/Area Number |
13J00727
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
間瀬 謙太朗 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸素還元 / 水の酸化 / 過酸化水素 / 均一系酸素還元触媒 / 不均一系半導体光触媒 / 人工光合成 / 太陽光エネルギー変換効率 / コバルトクロリン |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能な社会を構築するためには、自然エネルギーの有効利用が急務である。太陽光エネルギーは無尽蔵ではあるが地域や時間帯によって変動するため、安定にエネルギーを得るためには、貯蔵可能な化学エネルギーへの変換が重要である。本研究では酸素の2電子還元で得られ、常温常圧で液体である過酸化水素を新しいエネルギー媒体として注目した。酸素を効率よく2電子還元する電極触媒の開発を行い、これに光触媒を用いた水の酸化を組み合わせることで、酸素と水のみを原料とする光触媒的過酸化水素生成を行った。まず、反応選択性の制御が重要な酸素還元反応は、反応性の制御が容易な金属錯体を用いた均一系触媒の開発を行った。 触媒サイクル中で生成する低原子価金属イオンを安定化できるクロリンを配位子とする単核コバルト錯体を用いることで高い酸素還元選択性を有し、酸性溶液中において非常に安定でかつ過電圧の小さな酸素還元触媒の開発に成功した。この際、均一系条件で分光光学測定と電気化学測定を行うことで触媒反応機構についても明らかにした。 一方、水の酸化を行う光触媒は高い耐久性が要求されるため、金属酸化物などの不均一系半導体光触媒を用いた。水の酸化と酸素還元を同時に達成する適切な価電子帯と伝導帯を有する半導体光り触媒として酸化タングステンとバナジン酸ビスマスを用いた。これらの酸素還元触媒と光触媒を正極・負極にそれぞれ担持し、ナフィオン膜で分離した2室型の光電気化学セルで光駆動過酸化水素生成を行った。負極に疑似太陽光を照射したところ、水中に加えて海水中においても過酸化水素が効率よく生成し(61 mM)、太陽光エネルギー変換効率は世界最高値の6.6%を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は金属クロリン錯体を用いた酸素還元反応の触媒反応機構解明および高効率化に関する研究が大きく進展し、これらの成果として、Inorganic Chemistryに掲載され、学会発表にも積極的に参加し、国内外で高く評価されている。 その後、効率的な酸素還元電極触媒の開発に成功したので、現在は酸素還元電極触媒と光触媒を用いた水の酸化と組み合わせることで水と酸素のみを原料とする光触媒的過酸化水素生成へと研究を展開し、2室型光電気化学セルを用いたシステムで世界最高活性の太陽光エネルギー変換効率を達成するなど世界トップレベルの研究成果をあげ、二報の論文を現在投稿済みもしくは準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2室型光電気化学セルを用いた光り触媒的過酸化水素生成システムの問題点として、正極で生成した過酸化水素が濃度勾配によりナフィオン膜を透過し、負極の光触媒で分解することが挙げられる。この対策として、尿素やポリペプチド、スカンジウムイオンなどの過酸化水素と強い水素結合を形成すると考えられる試薬を添加することでナフィオン膜の透過を防ぐ予定である。また光捕集能力と伝導性に優れた半導体光触媒を組み合わせたタンデム型の光触媒を用いる事で太陽光エネルギー変換効率の向上を目指す予定である。
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Research Products
(4 results)