2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J00744
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
永沼 達郎 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 極長鎖脂肪酸 / 脂肪族アルデヒド / ALDH3A2 / シェーグレン・ラルソン症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
極長鎖脂肪酸産生制御機構の解析 昨年度までに,ELOVL6活性が次段階の還元反応を担うKARにより制御されていることを明らかにした。本年度は追加実験として,ELOVL6がKARと共存することで構造が変化し基質が結合しやすくなっている可能性を考え実証を試みた。しかしELOVL6とKARが多重膜貫通タンパクであることからELOVL6とKARとの直接的な相互作用を実験的に証明することが難しく,KARによりELOVL6活性が上昇する分子機構は仮説として報告し論文受理に至った。 シェーグレン・ラルソン症候群の病態メカニズムの解析 昨年度作製したAldh3a2ノックアウトマウス (A2 KO)を用いて皮膚バリア機能及び表皮脂質組成を評価したところ正常であった。そこで野生型及びA2 KOの表皮ライセートを用いて脂肪族アルデヒド代謝活性を測定したところ,A2 KOでは活性がほぼ残存していた。ヒトとマウスの表現型の違いを生み出す原因を追究したところ,マウスの表皮にはAldh3a2以外にヒトでは活性がないAldh3b2が高発現していることを見出した。加えて,Aldh3b2とAldh3a2の基質特異性が重複していることも示し論文にて発表した。さらに,Aldh3b2はケラチノサイトにおいて分化依存的に発現量が上昇することも示した。次にA2 KO皮膚のHE染色切片及び電子顕微鏡観察を行い,A2 KOの表皮基底層において細胞間隙の拡大やミトコンドリア数増大などの異常を見出した。基底層細胞間隙の拡大は細胞増殖の亢進を示唆するものであり,事実A2 KOのケラチノサイト初代培養細胞では増殖が亢進していた。採取したケラチノサイトは表皮と異なり未分化な細胞集団であるためAldh3b2の発現量が低く,A2 KOケラチノサイトでは脂肪族アルデヒド代謝活性が大きく低下していた。加えてS1P分解経路中で生じるアルデヒドの代謝も抑制されていた。以上の解析により得られた結果を国内の学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極長鎖脂肪酸伸長酵素の解析については,昨年度までに得られた結果からELOVL6活性が上昇するのはKARとの相互作用によるELOVL6の構造変化が関与する仮説をたてた。実験的な証明には至らなかったものの,仮説として提案,論文受理に至った。 ALDH3A2ノックアウトマウスの解析は,マウス個体レベルではシェーグレン・ラルソン症候群に見られるような表現型がみられなかったものの,組織レベル・細胞レベルでは様々な異常が観察された。また,ヒトとマウスとで表現型が異なる原因がAldh3b2によるものであることを示唆し,Aldh3b2の発現量が低い未分化のケラチノサイトにおいて脂肪族アルデヒド代謝活性が大幅に低下していること,S1P分解経路由来のアルデヒド代謝が抑制されていることを明らかにした。さらに,Aldh3a2の欠損により未分化ケラチノサイトの細胞増殖が亢進するという表現型を見出した。このことから,Aldh3a2欠損マウスのケラチノサイトがシェーグレン・ラルソン症候群の病態分子メカニズム解析におけるモデルとなる可能性が示され,学会発表に至った。 以上より,本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析により,Aldh3a2欠損マウスのケラチノサイトでは細胞増殖が亢進していることを明らかにしている。今後はAldh3a2欠損マウスのケラチノサイトにおいて細胞増殖が亢進する分子メカニズムを詳細に解析し,シェーグレン・ラルソン症候群の病態メカニズムに迫る。具体的には,細胞増殖の亢進を引き起こす引き金となるアルデヒド分子種の発生源を特定するために,S1P分解経路の阻害剤や過剰発現/ノックダウン系を用いてケラチノサイトの増殖を評価する。また,細胞増殖亢進の原因となる細胞内外のシグナル (EGF・TGFシグナル等)の変化を定量的PCRやウエスタンブロッティングにより評価する。さらに,分化したケラチノサイトにおける疾患モデル確立に向け,Aldh3b2のノックダウンまたはノックアウト細胞の作製・解析を行う。具体的な解析としては,Aldh3b2をノックダウン/ノックアウトしたAldh3a2欠損ケラチノサイトにおいて,皮膚バリア機能に重要なアシルセラミド組成を炭素鎖長ごとに定量する。加えてアシルセラミドの合成活性を評価する。 以上の解析によりシェーグレン・ラルソン症候群の病態を分子レベルで明らかにし,学会・論文での発表を目指す。
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Research Products
(15 results)