2014 Fiscal Year Annual Research Report
マルブランシュ哲学における形而上学と自然学との関係
Project/Area Number |
13J00754
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橘 英希 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | マルブランシュ / 哲学史 / 科学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
マルブランシュ哲学における自然学の位置づけ、とくにそれが形而上学の諸理論と取り結ぶ関係について調査するという本研究の課題のもと、昨年度はとくに以下の二点について検討した。 一.前年度の研究を踏まえ、創造論を当時の他の哲学者、神学者との比較において検討し、マルブランシュの理論に固有な点を取り出しつつその独自性を明らかにするべく努めた。この創造論は、その根幹に人間と神の理性について主張される一義性テーゼを据える点においてデカルトと、神の個別意志を低く見積もりその一般性を礼賛する点においてアルノーと、神の知性の役割を最大化することで意志の力能を減ずる点においてフェヌロンとそれぞれ対立した。創造論はこれら諸テーゼを駆使することによって自然学へと原理的基盤を供給することを試みたわけだが、1690年代に衝突論が失敗をみたことによって、創造論のかかえる問題が明るみとなり、上の諸論点においてマルブランシュは後退の余儀なきに至った。 二.創造論が自然学の失敗によって被った余波を検討するべく、1690年代後半に神秘主義者とのあいだで争われた純粋愛をめぐる論争を追った。『神の愛についての論考』を中心に論敵であるラミやフェヌロンの著作をも繙きつつマルブランシュの立場を整理した。神への愛ですら純粋ではありえず、その根底には快への欲望が存することを主張するマルブランシュの根拠には、神的意志の個別性への着目が見いだされることを見抜き、自然学上の失敗以前には見られることのなかった神論の新たな展開を認めた。 基礎資料の読解作業に専念したため成果の公表には至らなかったが、今後の発表を見据えての体力作りは十分になされたと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度はおもに形而上学上の諸理論を整理することに傾注した結果、自然学の個別分野(とくに光学、宇宙論)の解明作業にはほとんど着手できなかった。今年度全力を挙げてその全容解明に取り組む。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでと変わらずマルブランシュのテクストの読解作業が中心となるが、当時マルブランシュが巻き込まれていた各種の論争ー観念論争、恩寵論争、無限小論争でのその立場を正確に位置づけることで、多角的な視点から彼の哲学大系を捉えることを試みる。よって他の哲学者、神学者、自然学者の著作を検討範囲にいれることをいとわずに研究をすすめていく。
|