2013 Fiscal Year Annual Research Report
らせんの集合に基づく結晶設計による有機固体オプトエレクトロニクス材料の創製
Project/Area Number |
13J00763
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐々木 俊之 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機塩 / 有機結晶 / 極性結晶 / 非線形学材料 / カルボン酸アンモニウム塩 / 2回らせん |
Research Abstract |
本研究では、有機結晶中で普遍的に観測される2回らせんを根幹とした階層的設計による高機能有機固体材料の創製を目的としている。今回、胆汁酸のアミン誘導体(LCAm)を合成し、様々な機能性カルボン酸との有機塩を作製することで、極性結晶の構築を行った。このとき、機能性カルボン酸としてπ共役部位を持つ安息香酸誘導体に着目した。 Gaussianを用いて二次非線形光学特性の1つの指標である超分極率の計算を行った結果、電子求引性の置換基を持つ場合にカルボン酸アニオンの分極が大きく、大きな非線形光学特性を与えうることがわかった。そこで、主に電子求引性の置換基を導入した安息香酸誘導体を用いた。 良質な単結晶が得られた有機塩について単結晶X線構造解析を行った結果、5種類の有機塩が極性結晶を構築していることがわかった。その中でも3-ニトロ安息香酸を用いた場合には、2回らせん軸と分子の極性の軸方向が他のものに比べて平行に近くなっており、大きな極性を持ちうる構造であることがわかった。すなわち、本系においてより大きな極性を持つ結晶の作製には、安息香酸誘導体のm位に置換基を導入することが良いと言える。今後、この方針に基づき、さらに多様な機能性カルボン酸の導入を行う。 また、胆汁酸は結晶化する際に様々な分子を包接する事が知られている。今回の系で用いたLCAMにおいても、LCAmと機能性カルボン酸により形成されるチャネル空間に芳香族分子を取り込んだ結晶が得られた。これは、包接現象を利用した第三成分の導入による結晶の機能化の可能性を示唆するものであり、極性結晶の多機能化という点で非常に興味深い結果と言える。 これらの成果は、今後の分子設計指針を与えるとともに、複合機能を持つ新規非線形光学材料開発の可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としていたアミンおよび様々な機能性カルボン酸の合成に成功した。さらに、それらアミンとカルボン酸との有機塩を合成し、単結晶作製とともに結晶構造解析も達成している。そのうちいくつかは望まない結晶構造となっていたが、多くのものが極性結晶を構築していることがわかった。また、特定のカルボン酸を用いることで、チャネル状の空間構築もみられ、芳香族分子の取り込みを確認した。これらの成果は、本手法が有機非線形光学材料の開発において有望であることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらに多くの機能性カルボン酸を用いて極性結晶の構築を行う。このとき、カルボン酸の種類によっては結晶化能が悪く、結晶構造解析に必要なサイズの結晶を作製することが困難な場合がある。こういった場合には、結晶化条件の検討とともに、放射光施設SPring-8などを用いた構造決定を行っていく。また、得られた極性結晶の非線形光学特性、特に第二高調波発生(SHG)について評価も行っていく。さらに、実際にデバイスへの応用も視野に入れ、良質かつサイズの大きな結晶の作製を行う。
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Research Products
(9 results)