2013 Fiscal Year Annual Research Report
精密有機合成におけるカルボン酸およびカルボン酸誘導体の直接利用法の開発
Project/Area Number |
13J00819
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稻本 佳寛 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 有機合成 / カルボン酸誘導体 / エステル / アミド / カルボン酸 / 有機ケイ素化合物 / インジウム |
Research Abstract |
エステルやアミド、カルボン酸などの化学的に安定な化合物を、触媒反応により、簡便な一段階の反応操作で高度に修飾された化合物に変換する手法の開発が研究目的である。安定で容易に入手可能な化学原料であるエステルなどを、効率的に多官能性化合物へ変換することが可能になれば、有機合成化学の分野に大きな波及効果をもたらす。具体的には、エステルとヒドロシラン、有機ケイ素化合物の直接三成分反応をヨウ化インジウム触媒存在下、室温で行うことによって、エステルに対して還元的に求核剤の付加が起こり、官能基化されたアルコールまたはエーテルが得られた。エステルに代えて、アミドを用いた反応においては、アミドの窒素原子上に電子求引基であるスルホニル基を導入することで、連続的な二種類の求核剤の付加反応が可能となり、アミノ基のα位が置換されたアミン化合物が得られた。また、酸性プロトンを有するカルボン酸に対しては、反応系中でヒドロシランを用いる簡便な前処理を施した後に、エステル・アミドの反応と同様に還元的な求核剤の付加を行うことで、目的のアルコール化合物が生成した。特に、アミドを用いた反応においては、得られた生成物のスルホニル基の脱保護を行うことで、β-ラクタム骨格を有する縮環化合物の合成に成功した。さらに、ガリウム触媒を用い、エステルと、異なる二種類の有機ケイ素求核剤の三成分反応を一段階の反応操作で行うことで、二種類の求核剤が付加したアルコール誘導体を得ることに成功した。特に、反応基質としてラクトンを用いた場合には、環状エーテルの酸素原子のα位に二種類の置換基を有する多官能性化合物が得られた。上記の反応は、安定なカルボン酸誘導体を直接利用し、二種類の求核剤の効率的な付加反応を開発したという点で重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、エステル、アミド、カルボン酸に対して、一段階の簡便な操作で還元的に求核剤を導入する反応においては、成果を学術論文として発表した。二種類の炭素求核剤を連続的にエステルに付加させる反応に対しては、現在、論文作成中であり、近日中に論文投稿を行う。アミドからカルパネム系抗生物質の合成を行うことはできなかったが、類似骨格であるβ-ラクタム環を有する縮環化合物の合成には成功している。
|
Strategy for Future Research Activity |
エステルよりも酸化度が高い炭酸エステルや二酸化炭素に、連続的に異なる三種類の求核剤を付加させる反応の開発を行う。炭酸エステルや二酸化炭素などの酸化度が高い基質に対して、選択的な炭素-炭素結合の形成を行うことができれば、有機合成化学の発展に繋がり、資源の効率的な利用の観点からも重要である。一度に四成分の反応を行う場合、求核剤の連続的な付加の制御がさらに困難になり、副生成物が多く得られることが予想される。これに対して、エステルなどへの連続的な付加反応と同様に、有機ケイ素求核剤とインジウム触媒もしくはガリウム触媒を用いることで、炭酸エステルや二酸化炭素に連続的な付加反応が達成されるものと期待している。
|
Research Products
(4 results)