2013 Fiscal Year Annual Research Report
ラトヴィア語・日本語・ロシア語動詞のアスペクトに関する対照研究
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13J00876
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
堀口 大樹 筑波大学, 人文社会系, 特別研究員(PD)
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Keywords | ラトヴィア語 / ロシア語 / アスペクト / 接頭辞 |
Research Abstract |
本年度の目的は、ラトヴィア語とロシア語の動詞アスペクトの対照研究であった。 借用語の動詞のアスペクト対立について、ロシア語と比較した場合、借用語の動詞のアスペクト対立は規範主義では認められていない。文法化の観点では、接頭辞no-に借用語の動詞の完了化に特化した振る舞いが観察されることから、文法化の一途を辿っているように思われるが、アスペクト対立自体の文法化の程度が低いこと、規範主義からの批判があることから、文法化と見なすことは難しい。 「少し」の意味を示す個別的なアスペクト(ラトヴィア語の接頭辞pa-とロシア語の接頭辞no-を持つ動詞)にも焦点を当て、動詞アスペクトと話者の感情の結びつきを指摘した。本研究成果は、他の接頭辞とその個別的アスペクトの対照研究や、来年度以降の日本語を含めた対照研究への応用が期待される。 元々接頭辞がついていない借用語の動詞への接頭辞付加や、接頭辞動詞に新たに接頭辞を加える二重接頭辞付加において、話者が積極的に関与する接頭辞付加の動的側面は顕著である。ラトヴィア語における借用語の動詞接頭辞付加の総合的記述を基に、両言語における借用語への動詞の動的側面を明らかにした。また二重接頭辞付加はラトヴィア語では一般的でないが、ロシア語学での同現象の先行研究を基に量的・質的分析を行い、ラトヴィア語では動作の繰り返しを示す個別アスペクトが最も生産的に二重接頭辞付加において示されることを明らかにした。 日本で初となるラトヴィア語の教科書『ニューエクスプレスラトヴィア語』を発刊し、ラトヴィア語教育に貢献をしたほか、日本におけるラトヴィア語学習の現状を、教材開発や普及活動などの観点から報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該分野におけるラトヴィア語とロシア語の対照研究ほこれまでになく、借用語の動詞への接頭辞付加によるアスペクト対立の表示といった言語の動的側面や、動詞アスペクトと感情のつながりに着眼し、複数の対照言語学的知見が得られたほか、独創性のある研究成果を残した。
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Strategy for Future Research Activity |
ラトヴィア語とロシア語において、借用語の動詞を生産的に完了する接頭辞no-とnpo-を対照するほか、その他の個別的アスペクトを示す接頭辞や接尾辞を選び、これまでに得られた知見を深化させる必要がある。またコーパスなどを使った量的分析による対照研究において、研究対象となるラトヴィア語、ロシア語、日本語における、規模や内容の点で均一な言語コーパスの選定、またラトヴィア語と日本語の対照研究における適切なパラレルテキストの選定が求められる。
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Research Products
(11 results)