2013 Fiscal Year Annual Research Report
酸化還元活性配位子を有する前周期遷移金属錯体の反応性の精密制御による新反応の開発
Project/Area Number |
13J00904
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
棚橋 宏将 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 酸化還元活性配位子 / タングステン / 有機ケイ素化合物還元剤 / アルキリデン錯体 |
Research Abstract |
研究課題① : d軌道に複数の電子を有する低原子価タングステン錯体は炭素-酸素二重結合や窒素-窒素多重結合を活性化できる、非常に電子供与性の高い化学種であることが知られている。申請者は有機ケイ素化合物還元剤によって高原子価タングステン種を還元し、その結果生じる低原子価タングステン種に酸化還元活性活性配位子を反応させることによって、研究対称としている酸化還元活性配位子(N, N-bis (aryl)-1,4-diaza-1,3-butadiene, 4,4'-dimethylbenzil)を有するタングステン錯体の合成に成功した。この合成手法を用いることにより、電子的環境や立体的環境の大きく異なる錯体のライブラリーを構築した。さらに、合成した錯体とアゾ化合物を反応させることにより、酸化還元活性配位子に特有の反応挙動を観測した。以上の研究成果は、Journal of the American Chemical Societyに学術論文として発表した他、複数の学会・シンポジウムにおいて発表した。 研究課題② : 研究課題①において確立したタングステン錯体に対する酸化還元活性配位子の導入法をイミドタングステン四塩化物に適用し、錯体合成を行った。得られた錯体はジベンジルマグネシウムでジアルキル化することができ、さらにそのジアルキル錯体をPMe_2Ph存在下で加熱することによって目的とする酸化還元活性配位子を有するタングステンアルキリデン錯体の合成と単離に成功した。本研究成果は複数の学会・シンポジウムにおいて発表しており、現在、学術論文として準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題としている酸化還元活性配位子を有する前周期遷移金属錯体の合成に成功した。多様な配位子を有する錯体の合成と構造決定に成功しており、電子的環境や立体的環境の異なるタングステン錯体のライブラリーを構築できたことは非常に重要な進歩であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに合成した錯体の反応性の検討に主眼を置いた研究を推進する。一般的に、用いる錯体の電子的環境や立体的環境がその錯体の反応性に大きく影響を与えるため、これまでに合成した錯体群が必ずしも最適でない可能性がある。その場合は、適宜配位子の再検討を行いながら研究を推進する必要が生じると考えている。
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Research Products
(8 results)