2014 Fiscal Year Annual Research Report
視覚刺激が誘発する快・不快の心理・生理メカニズムの解明
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13J00943
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
今泉 修 千葉大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 視覚 / 不快 / 片頭痛 / 絵画 / 重心動揺 / 幻肢 / 運動 / 時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚的な不快の機序について不快を受けやすい片頭痛患者を対象にして検討し,視覚と平衡感覚や視覚と運動の協応について片頭痛患者や幻肢所有者を対象にして検討した。 (検討1)不快を誘発しやすい視覚刺激は空間周波数 (視覚刺激の明暗の疎密) の中域成分を多く含むこと,また,神経学的な特異性が知覚や芸術表現に表出することが知られていた。本年度は,視覚的な不快を感じやすい片頭痛患者が描く絵画に,不快関連の空間周波数特性が現れるかどうかを調べた。片頭痛患者であったと知られている著名な画家の作品の画像解析を行った結果,不快関連の空間周波数中域成分が顕著に含まれることを示した。さらに,片頭痛患者と健常者に対して,快いまたは不快な画像を作成させる実験を実施したところ,片頭痛患者では快い画像と不快な画像の空間周波数特性が類似することが示された。片頭痛患者は視覚的な不快やそれに関わる空間的特性を創作に応用する可能性が示唆された。 (検討2)片頭痛患者は乗り物酔いをしやすく平衡機能がより視覚依存であること,また,運動錯視を知覚しやすいことが指摘されていた。我々は片頭痛患者では運動錯視が重心動揺を誘発しやすいと仮説を立てた。これを検討するため,運動錯視あり・なし画像の観察時の重心動揺を,片頭痛患者と健常者とで比較した。その結果,運動錯視の残効が片頭痛患者の重心動揺を増すことが示唆された。 (検討3)視覚運動協応における時間的整合の効果について症例検討を行った。私たちが身体を適切に動かすためには,運動とその結果とが時間的に整合する必要がある。これが四肢損傷後に身体感覚が残る『幻肢』についても該当するかを検討した。幻肢所有者が参加した実験では,映像遅延発生装置を用いて,幻肢の運動に応じた健肢の鏡像を時間的に不整合にすることで,幻肢の操作感覚やそれに応じた筋活動が減少することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検討1で,視覚的不快のメカニズムについて,空間周波数の観点から検討するだけでなくその知見を芸術科学の新しい視点から再検討することができた上に,成果を国際会議で発表したため。検討2では,世界で初めて片頭痛患者における運動錯視の重心動揺への影響を示した点で意義深く,成果を国際会議で発表したため。検討3では,従来の視覚運動協応における知見を幻肢にもあてはめることに成功した上に,国際誌へ論文を掲載したため。
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Strategy for Future Research Activity |
検討1と2の成果を英語論文にまとめる。そして検討2を拡張して,視覚の平衡感覚への影響について,運動錯視方向や錯視刺激に誘発されるストレスが重心動揺にどのように影響するかを調べる。感覚運動協応について豊富な知見を得られる見込みがあるので,検討3を拡張して,身体の操作感が,時間知覚や感情をどのように修飾するかを検討する。具体的には,身体の操作感が時間の長短の感じ方をどのように変調するかを検討する。また,身体の操作感が感情をどのように変調するか,健常群検討や症例検討をする。
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[Presentation] Visuomotor timing and sense of agency in a phantom limb: a case study2014
Author(s)
Imaizumi, S., Asai, T., Kanayama, N., Kawamura, M., & Koyama, S.
Organizer
37th European Conference on Visual Perception
Place of Presentation
Sava center, Belgrade, Serbia
Year and Date
2014-08-26
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