2015 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレート反強磁性体における量子スピン液体状態の研究
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13J01100
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 大樹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピン液体 / 熱ホール効果 / カゴメ反強磁性 / 熱測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁気秩序のないスピン系における熱ホール効果は理論的に期待されていたが、実際熱ホール効果が観測できるかは実験的に明らかにされてはいなかった。 スピン液体における熱ホール効果の測定が行われた物質として、例えばEtMe3Sb[Pd(dmit)2]2、Tb2Ti2O7がある。前者では測定誤差の範囲内で熱ホール効果は確認できておらず、後者では熱ホール効果が観測できたものの、測定温度がスピン系の交換相互作用のスケールよりも大きく、スピン液体相のもつスピン相関と熱ホール効果の関連性が不明であった。 そこで、私たちは、EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2の測定時よりも小さなホール角でも観測できるよう装置を改良した。試料以外の熱ホール効果を抑えるために試料の熱浴には熱伝導率の高い絶縁体であるフッ化リチウムを用い、試料には熱流と平行の方向に10~20%程度もの温度差がつく程度の大きな熱流を流した。これらの工夫により1/1000倍小さな熱ホール角でも測定できるまでに装置を改良することができた。さらに、交換相互作用の大きさが60 K程度であり、測定温度を変化させることで高温のスピン相関のない常磁性相から、スピン相関の発達したスピン液体相、さらに低温での磁気秩序相までアクセスできるボルボサイトを測定試料に用いることで、スピン相関と熱ホール効果の関係を観察した。 その結果、有限の熱ホール効果を観測することができた。熱ホール伝導度は交換相互作用の温度スケールよりも高温の領域では0で、試料を冷却していくにつれて負の値になる。また磁化率がピークを持つ温度で熱ホール伝導度も同様にピークをもつ。これらの結果は、熱ホール効果を担うキャリアがスピン励起であり、磁場によって流れが曲げられるエキゾチックなものであることを示している。 この成果をまとめた論文は現在査読中である。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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