2013 Fiscal Year Annual Research Report
コヒーレントラマン分光法による時間分解ラマン光学活性測定法の開発
Project/Area Number |
13J01123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平松 光太郎 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子分光 / 光学活性 / キラリティー / 円二色性 / 超高速分光 / ラマン光学活性 / コヒーレントラマン / ヘテロダイン検出 |
Research Abstract |
本研究課題の最終目標である、フェムト秒時間分解CARS-ROA分光法の開発に向け、次の2点の装置開発、改良を行った。 1. 昨年までに原理検証実験に成功していた、ナノ秒マイクロチップレーザーを光源としたCARS-ROA分光装置を改良した。2012年に世界初となるCARS-ROA観測を報告した(K. Hiramatsu, et al, Phys. Rev. Lett. 109, 083901)が、時間分解分光への応用を考えるとその性能は十分であるとは言えなかった。そこで、まず、CARS-ROA信号をヘテロダイン検出する際に用いるローカルオシレータ(LO)の導入方法をself-heterodyne方式からactive-heterodyne方式に偏光することで装置の改良を試みた。結果として、感度の向上はみられなかったものの、旋光分散(ORD)に由来する偽信号の抑制に効果的であることを示した(K. Hiramatsu, et al., Opt. Express 21,13515)。次に、測定に用いる光源の波長を1064nmから532nmへと変更することで、信号強度の増加を試みた。結果として、532nmを励起光として用いることで、信号強度は飛躍的に向上し、同じ露光時間での信号雑音比(SNR)は1064nmの場合と比べて9倍も向上した。 2. フェムト秒の再生増幅器を光源とする、時間分解CD分光計を新たに開発した。時間分解分光の基礎として、まずは振動ROAよりも測定が容易である電子CDのフェムト秒時間分解測定装置の開発を行った。可視域全体をカバーする広帯域なフェムト秒パルスを光源としたCD/ORDスペクトルの同時測定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CARS-ROA分光法の改良を行い、感度向上を実現した。当初の目標通り、キラルな純液体に関しては1分程度でのROAスペクトルの取得が可能となった。また、フェムト秒パルスを光源としたCD/ORD分光計の開発を行い時間分解キラル分光法の礎を築いた。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に開発したフェムト秒パルスを光源としたCD/ŌRD分光計に紫外のポンプ光を導入することで、実際に光で誘起される反応途中のCD/ŌRDスペクトルの測定を試みる。ポンプ光によってサンプルに誘起される異方性がCD/ŌRD測定の障害になると予想されるが、その点はポンプ光の偏光を精密に制御することでCD/ŌRD成分と異方性による成分の分離を行う予定である。測定の初めの段階では、光異性化の機構がよく研究されているスチルベンなどの分子にキラルな官能基を導入した分子などをサンプルとして用いる予定である。
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Research Products
(10 results)