2013 Fiscal Year Annual Research Report
ウェルビーングの向上を目的とする全般性不安障害の予防プログラムの開発・効果検証
Project/Area Number |
13J01136
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
竹林 由武 広島大学, 大学院総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 全般性不安障害 / ウェルビーング / 不安に対する恐怖 / 心配に対する否定的な評価 / 自己制御 / 遅延価値割引 / 心拍変動 / 大学生 |
Research Abstract |
本年度は, 全般性不安障害の予防を目的とした介入プログラムの構成について指針を得るために, 調査および実験を実施し, ウェルビーングの向上が全般性不安症状に影響を与えるプロセスを検討した。大学生290名を対象に調査を実施した結果, 不安や心配を過剰に否定的に評価する傾向が高い場合に, 全般性不安症状が経時的に増悪することが明らかになった。そして, 「人生の目的が明確であること」あるいは「自身の行動を自律的に決定すること」といったウェルビーングの構成要素が高い場合には, 不安や心配を過剰に否定的に評価する傾向が高くても全般性不安症状が増悪しないことが明らかになった。これらの知見は, 脆弱性(不安や心配を過剰に否定的に評価する傾向)が全般性不安症状を増悪するプロセスに対して, ウェルビーングが緩衝要因として機能することを示すものであった。 また, ウェルビーングの背景に, 遅延価値割引や心拍変動といった行動の自己制御に関わる基礎的なメカニズムを想定し, それらの要因と全般性不安症状の関係性について大学生60名を対象に実験課題・生理指標を用いた検討を実施した。その結果, 自己制御に関わる基礎的なメカニズムの機能が高い場合に, 脆弱性による全般性不安症状の増悪が軽減されることが明らかになった。これらの知見は, 脆弱性と全般性不安症状の増悪関係に対するウェルビーングの緩衝的な作用が, 遅延価値割引や心拍変動性などの自己制御機能を基盤としている可能性を示唆する。 以上の研究成果は, 全般性不安障害の予防において, 「人生の目的の明確性」や「行動の自律的な決定」を促進する介入方法が有効である可能性を示唆する。また, それらのウェルビーングの構成要素の促進を図る際に, 自己制御に関わる要因(遅延価値割引や心拍変動)をターゲットに含むことが有効であることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的は, 介入プログラムの内容についての指針を得るために, 予備的な調査・実験を実施することであった。本年度の研究成果から, 目的は達成されたため, 次年度では, ウェルビーングの向上を目的とする全般性不安障害の予防的介入プログラムを実施し, その効果検証を進めることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では, 本年度に得られた研究成果に基づいて, ウェルビーングの向上を目的とする全般性不安障害の予防的介入プログラムを開発・実施し, その効果検証を行う。その際, 本年度の研究成果を踏まえ, 介入プログラムの予防的な効果を検証するだけではなく, 介入プログラムがどのように全般性不安症状の増悪を防止するかといった作用機序についても併せて検討する予定である。
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Research Products
(1 results)