2013 Fiscal Year Annual Research Report
臨界磁気ゆらぎを持つウラン系化合物とその関連物質の研究
Project/Area Number |
13J01147
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
軽部 皓介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 核磁気共鳴法 / 強磁性臨界現象 / ウラン系遍歴強磁性体 |
Research Abstract |
独自に開発したCuBe製のクランプ型一軸性圧カセルを用いて、遍歴メタ磁性体UCoAlの単結晶試料にb軸およびc軸方向の一軸性圧力(それぞれ"P_<||b>", P_<||c>"と表記する)を印可し^<27>Al-NMR測定を行い、以下の重要な結果を得た。 (1)一軸性圧力印可方向によるUCoAlの磁性の正反対の変化の観測 これまでに、常圧において、低温でc軸方向の磁場("H_<||c>"と表記する)を印可するとH_<||c>=O.6T程度で一次のメタ磁性転移に伴い^<27>Al-NMRスペクトルの常磁性成分が消失し、強磁性成分が出現することを確かめている。これを、一軸性圧力下で行うと、P_<||b>下では、^<27>Al-NMRスペクトルの常磁性成分がより高いH_<||c>まで残ることを観測した。これは、P_<||b>下ではメタ磁性転移磁場が上昇する、すなわち、強磁性相から遠ざかることを意味する。また、P_<||c>下では、P_<||c>=0.08GPa以上で、H_<||c>=OTでも^<27>Al-NMRスペクトルに強磁性成分が出現し、P_<||c>を大きくするにつれ強磁性成分出現温度が上昇することを確かめた。 以上の結果から、P_<||b>とP_<||c>がそれぞれ、UCoAlを強磁性相から遠ざける、強磁性相に近づける、正反対のパラメータであることを^<27>Al核サイトによるミクロな視点から明らかにした。 (2)一軸性庄力印可方向による磁気ゆらぎの異方性と三重臨界点(TCP)の存在の示唆 これまでに、常圧において、H_<||c>=OTで^<27>A1・NMRの核スピンー格子緩和率(T_1T)^<-1>が20K付近にブロードなピークを持つ、すなわち、c軸方向の磁気ゆらぎが発達することを確かめている。これを、一軸性圧力下で行うと、P_<||b>下、P_<||c>下で、(T_1T)^<-1>の20K付近のピーク強度がそれぞれ、抑制、増強されることを確かめた。これは、H_<||c>=OT上ではP_<||c>の方向に向かって磁気ゆらぎが更に発達していくことを意味する。特に、P_<||c>=-0.16GPa付近で、(T_1T)^<-1>のピーク強度が最大値をとることを観測した。これは、、P_<||c>=0.16GPa付近に強磁性転移が一次から二次に変化する境界点、すなわち三重臨界点(TCP)が存在することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究のメインテーマは、遍歴メタ磁性体UCoAlの圧力効果による磁性の変化と強磁性臨界現象の研究である。今回、独自にNMR測定が可能な一軸性圧カセルを開発し、UCoAlについて一軸性圧力方向による明確な磁性の変化と三重臨界点を示唆する磁気ゆらぎの発達の観測に成功した。従って、本研究テーマの目的に見合う成果が挙げられたと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
UCoAlの強磁性三重臨界点の研究として、UCoAlのFeドープ系試料のNQR、NMR測定を行う予定である。わずか2%のFeドープでも、e軸方向の一軸性圧力と同様、ゼロ磁場で強磁性転移を起こすことが知られているので、Feのドープ量を変えることにより強磁性三重臨界点の臨界性が現れることが期待される。 研究代表者は既に東北大学金属材料研究所にてUCoAlのFeドープ系多結晶試料(0%, 0.5%, 10%, 2%の4つ)を作成し、現在NQR、NMR測定を始めている段階にある。
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Research Products
(6 results)