2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01148
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田辺 章悟 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 神経傷害 / 免疫 / RGMa |
Research Abstract |
頭部への強い衝撃や虚血などにより中枢神経が損傷を受けると言語障害や運動障害など様々な障害が起こる。ひとたび損傷を受けた中枢神経が再生することは極めて困難であり、重篤な後遺症が残ることが多い。一方、損傷した神経細胞の周囲ではミクログリアの活性化やリンパ球の浸潤など免疫担当細胞が活性化して炎症を引き起こしていることが知られている。これら免疫担当細胞は死滅した神経細胞を処理する役割を担うが、同時に生じた炎症により正常な神経細胞も攻撃してしまい症状を悪化させている。従ってこれら免疫担当細胞の活性化による炎症を抑制することが症状の軽減につながる可能性が考えられる。しかし、現在のところ有効に炎症を抑制する方法は提唱されておらず、また有望なターゲット分子も見つかっていない。そこで申請者は炎症を抑制させるターゲット分子の候補として軸索伸長阻害因子の1つであるRGMaに着目した。RGMaは神経細胞の軸索伸長を阻害する機能をもつが、一方で、免疫系の機能もつことが報告されている。本研究では、中枢神経損傷におけるRGMaの免疫機能に着目し、炎症による神経傷害を抑制することを目的にしている。 遺伝子発現解析の結果、リンパ球の中でもヘルパーT細胞の1つであるTh17細胞が特にRGMaを強く発現していることを見出した。Th17細胞は多発性硬化症などの自己免疫疾患において症状を増悪させている細胞として広く認知されている。我々はこのTh17細胞と神経細胞の共培養実験を行い、RGMaの中和抗体存在下で神経細胞死に対する影響を検討した。その結果、Th17細胞は神経細胞死を強く誘導する一方で、RGMa中和抗体存在下では神経傷害効果が抑制された。本実験結果は、Th17細胞が発現するRGMaが神経細胞死に深く関与していることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画ではミクログリアが発現するRGMaに焦点を絞って中枢神経損傷における機能を解析する予定であった。しかし、予想に反してミクログリアのみでなくTh17細胞がRGMaを強発現しているという実験結果が得られた。これはRGMa阻害による治療効果範囲が拡大することを意味する非常に重要な知見である。以上の理由により本研究は、当初の研究計画以上に伸展があると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、特定のT細胞は他の免疫系細胞やサイトカインを介さなくても直接神経細胞を傷害できることがわかった。今後は、in vivoにおけるTh17細胞のRGMaの役割を明らかにすることを目的に研究を進めていく予定である。そこで、Th17細胞との強い関与が知られている多発性硬化症のモデルマウスEAE (experimental autoimmune encephalomyelitis)を用いる。EAEにおいてTh17細胞のRGMaを抑制し、EAEの臨床症状や神経傷害の度合いを検討する。もう1つの柱として、ミクログリアとの相互作用を検討する。活性化したミクログリアはRGMaを発現し、T細胞はneogeninを発現している。中枢神経損傷の患部では両者が混在しているため、なんらかの相互作用をしている可能性が考えられる。そこでshRNAベクターを用いてミクログリア、あるいはTh17細胞特異的にRGMaの発現を抑制し、中枢神経損傷での炎症や神経細胞への影響を検討する。
|