2013 Fiscal Year Annual Research Report
移住・越境による在日ムスリム女性の信仰と実践の変容についての研究
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13J01203
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川崎 のぞみ 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 在日ムスリム / ネットワーク / モスクの機能分化 / 社会的関係 / 信仰的基盤の形成 / コミュニティ |
Research Abstract |
平成25年度の研究の成果は、当初の目標の一つである「在日ムスリム女性の信仰の維持・深化におけるモスクや私的な人間関係などのネットワークによる役割」を明らかにできたことである。主にモスクでの聞き取り調査を実施した。そこから明らかになったことは、在日ムスリム女性やその夫である外国人ムスリム(特に中古車貿易業を営むパキスタン人が多い)が、それぞれの男性・女性のネットワークからもたらされる情報や友人関係によって、ときには家族が分散居住したり、異なるモスクに通うことを選択することによって、夫・妻・子はそれぞれの社会的関係を築き、自らに必要な信仰的基盤を保持していることである。全国の各モスクは都市・郊外・地方といったモスクの立地と、各モスクに集まる人々の職業・エスニシティの交差により社会的機能の分の傾向がみられ、それらの間をネットワークを介して移動し必要な場所を選ぶことで、男性は都市部の中心的なモスクと地方のビジネス拠点となるモスクの間でビジネスやモスクでの活動の基盤となる信頼関係や経済的機会を得、一方で女性は比較的狭い地域のモスクの中で密な人間関係を築き、それを通して自己や子供の信仰を維持する仲間を形成している。 近年、全国に拡大するモスクは、これらのネットワークを通じた資金調達によって設立が加速したのであり、またそのモスクが彼ら自身の信仰や経済的基盤となるネットワークの結節点となっていることが明らかになった。また、従来から存在した在日ムスリム家族の国内外における移動性の高さ、単に経済的関係あるいは教育などの「経済移民」としての要因だけではなく、家族の成員それぞれの信仰上の必要からも説明できることが明らかになったという点は、重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールドワークにおける進展は期待以上のものであり、継続して調査すべきインフォーマントも多数得たが、そこで現在までに明らかになったことに対する理論的位置づけおよび分析がまだ不十分であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も同様の調査を行うが、より地域を広範囲に広げ、先に明らかにしたモスクの機能分化という図式の一般的妥当性をより高めることに努める。またそれを理論的に位置づけ、精度を高めるために文献研究・理論研究を並行して行っていく予定である。
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Research Products
(5 results)