2014 Fiscal Year Annual Research Report
種間および種内の協力進化をとらえる新しい理論的アプローチ
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13J01212
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内之宮 光紀 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 菌根菌 / 相利共生 / 資源配分 / 動的最適化 / コブ-ダグラス型生産関数 / 垂直伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請書内で言及されている研究目的・内容[2]の研究が国際誌Evolutionary Ecology Researchに掲載された。従来の研究では植物と菌根菌の資源交換を議論する際に成長を考慮していなかったが、この研究では植物と菌根菌の双方が成長する場合の資源交換についての研究である。植物と菌それぞれの炭素とリンの動態を記述し、最適な資源分配についてポントリャーギンの最大原理に従い、自分自身の適応度を最大にするような分配割合を求めた。取り込んだ資源の最適な資源分配は「全てを与える」、「一部を与える」、「全く与えない」の3つの戦略の組み合わせであることを示した。特に、取り込んだ資源の全てを与えるという行動は、成長を考えたことで初めて示されるものである。 次に、取り込んだ資源の一部を与える場合について、より詳細な解析を行った。解析において、生物の持つ各資源が同じ増加率で指数的に増加し、成長がコブ-ダグラス型の生産関数に従うと仮定した。このとき相手に与える資源の分配割合は、自分自身で獲得できる資源に対して、相手がくれる資源が相対的にどれだけ重要かに等しいことを示した。この割合は相手の状態などには依存しない。ここでの解析は、資源の増加率が共通であり、それを最大にするある種の協力的な場合であったが、同じ結果はポントリャーギンの最大原理より導かれる取り込んだ資源の一部を与える場合の必要条件からも導出できる。すなわち、協力的な場合の分配割合と非協力的な場合の分配割合が等しいことを示した。 申請書の研究目的・内容[3]に関する研究として、キクイムシと菌の共生における垂直伝播の進化についての研究を行い、学会等で発表した。本研究では、垂直伝播が双方の生物によって達成される場合を扱い、垂直伝播に関わる形質を前適応的に持っていることの重要性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的・内容[2]の研究が国際誌に掲載され、研究目的・内容[3]に関する研究も一部の結果を示すことができ、さらに、研究目的・内容[1]についても化学物質や空間構造などの課題が整理され数理モデルの製作に取り掛かっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的・内容[1]に関しては、数理モデルの拡張としてDIF-1以外の新しい化学物質を追加するとともに、空間構造を考慮する必要があることが分かった。現在は数理モデルの製作中である。 研究目的・内容[2]については研究結果をまとめて投稿した。今後はより複雑な一対二の場合へモデルを拡張する予定である。 研究目的・内容[3]は、ある程度の解析を行い、その結果を学会等で発表した。更なる解析を追加し、平成27年度中に論文にして投稿する予定である。
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Research Products
(10 results)