2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01237
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 曜 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | コレステリック液晶 / 反射型ディスプレイ / ポリマー / 電気学効果 / 液晶 / 屈折率変化 |
Research Abstract |
コレステリック液晶を用いた高速反射型ディスプレイの実現に向けて、ポリマー/液晶複合系における電気光学効果を調べた。ポリマー/液晶複合系は、光重合性モノマーと液晶の混合系に紫外光を照射することで起こる重合反応を利用して作製される。本研究と従来技術との大きな差は、重合性モノマーに液晶性(分子配列秩序)を示す材料を使用する点である。双方が持つ液晶性はポリマーと液晶間の相溶性を高め、重合反応によって誘起されるポリマー/液晶間の相分離を抑制し、結果として数十nm以下の小さな液晶ドメインを形成した。このような複合素子の電気光学特性には、以下に示す2つの利点が得られた。①重合後の素子は高い透明性を示し、電界印加後も可視向全域においておよそ100%の透過率を維持した。②従来の液晶素子に比べて1000倍程度短い応答時間(10μs)が実現された。これらの電気光学特性のメカニズムを明らかにするために、赤外分光法(FTIR)を用いて、ポリマー/液晶複合系に電界を印加したときの個々の分子の動きを調べた。その結果、電界に応答する媒質は、ポリマー中に分散している液晶分子であることが明らかにされた。このことから、①の高い透明性が得られた理由は、光の波長よりも十分に小さな空間における分子再配向により局所的な屈折率が変化することで、光散乱が起こらなかったためと考えられる。また、②の高速性が得られた理由は、分子再配向のスケールサイズが小さくなることで、弾性復元トルクが大きくなり、電界除去後の緩和運動が高速化されたためであると考えられる。このような電気光学効果の原理解明は、高速反射型ディスプレイの設計に向けて大きな進歩であり、学術雑誌Optical Materials Expressに掲載された。 また、実際のディスプレイ応用に向けて必須となる駆動電圧の低減に関わる研究にも進展が得られている。詳細は示さないが、今年度、特許出願を行うなどの活動を行った。順次、論文投稿も予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高い相溶性を持つポリマー/液晶複合系における電気光学効果の原理を明らかにすることができ、実際のディスプレイ応用に向けた研究指針が立てやすくなった。また、駆動電圧を1/5に低減するための新しい手法が見出され、当初の計画以上に研究の進展があったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究により、物理機構が明らかにされたので、今後は、実際にコレステリック液晶を用いた反射型ディスプレイの駆動の研究に移る。反射型ディスプレイを実現するために解決するべき重要な課題として、反射色の視野角依存性があるが、主にそれらを克服するための手法の提案を行っていく。具体的には、当初の研究計画にあったように、コレステリック液晶のヘルフリッヒ変形(螺旋構造の波打ち現象)を用いることで、反射色の角度依存性の効果を和らげることを狙う。
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Research Products
(6 results)