2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J01282
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福居 直哉 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 表面 / スピントロニクス / 電気伝導 |
Research Abstract |
近年スピン流が新しい物理量として確立し、特に、電流をスピン流に変換するスピンホール効果については、微細構造を用いた多くの研究が進んでいる。スピン流の発現にはスピン軌道相互作用が重要な働きをすることが分かっており、そのような系は盛んにスピン輸送が研究されている。一方、表面ラシュバ系や3次元トポロジカル絶縁体表面などの表面系にも強いスピン軌道相互作用が存在するにもかかわらず、従来そこでのスピン輸送現象は研究がない。これは、表面系を破壊しないように超高真空中で微細構造を作成し測定するという技術的な問題があったためである。 当研究ではその問題を集束イオンビーム(FIB)と4探針走査トンネル顕微鏡(4pSTM)の複合装置を開発することでその問題を解決し、表面系でのスピン輸送現象(スピンホール効果)を解明することを目的とする。スピンホール効果を測定する手法としてH型構造の非局所抵抗測定を採用した。トポロジカル絶縁体Bi_2Se_3薄膜上に、2本の導線部とそれらをつなぐ架橋部からなるH型構造をFIBを用いて作成した。架橋部の幅と長さを様々に変えた微細構造で4pSTMを用いて室温での非局所抵抗測定を行った。非局所抵抗には古典的なオームの法則から説明される成分とスピンホール効果に由来すると思われる成分が確認された。これを定量的に解析することでスピンホール角0.032、スピン拡散長230nmを得た。スピンホール角は生まれるスピン流と電流の比であり、白金などと同等に大きな値である。スピン拡散長は文献値と矛盾しない値である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
装置の故障等により十分なデータが得られておらず系統的な定量的議論が不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降、先述のスピンホール効果測定をBi2Se3の膜厚や測定温度を変化させ、スピンホール角の系統的な変化を追う。基本的には表面由来成分は一定値をとりバルク由来成分は膜厚に対して変化すると予想されるため、膜厚を変えることで両成分を分離することが可能である。また、膜厚4QLでトポロジカル相転移が起こることが報告されており、この膜厚前後で物性の変化が見られる可能性がある。また、温度変化を見ることでスピン拡散長やスピンホール角の温度依存性が判明する。
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