2013 Fiscal Year Annual Research Report
含窒素複素芳香環化合物の直接的不斉水素化反応による光学活性アミンの効率的合成
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13J01445
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
飯室 敦弘 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 不斉水素化 / イリジウム / ピリジン |
Research Abstract |
ピリジンの直接不斉水素化反応の開発 キラルな環状アミン骨格は天然物など様々な生理活性化合物に見られる重要な基本骨格であるため、その効率的合成法の開発が求められている。ピリジンの触媒的不斉水素化反応はキラルなピペリジンを得るための最も直接的かつアトムエコノミーに優れた反応と考えられてきたが、ピリジンの高い芳香族安定性のため触媒的不斉水素化反応は困難であった。従来ピリジンの触媒的不斉水素化反応を達成するには、ピリジンの窒素上イリド形成やベンジル基などの保護基の導入が不可欠であった。このような手法を用いた場合、反応後に脱保護という処理が必要となってくる。そこでイリジウム触媒によるイソキノリンの不斉水素化における塩形成による反応性促進効果を活かし、ピリジン塩を基質とした反応開発を行うことを企図した。種々条件検討を行ったところ、モデル基質として2-メチル-6-フェニルピリジン臭化水素酸塩、触媒として[Ilr (H)((S)-binap)}_2(μ-Cl)]Clを用いて反応を検討したところ、高ジアステレオ選択かつエナンチオ選択的に反応が進行することを見出した。反応条件の最適化を行うことによりエナンチオ選択性の向上に成功し、ピリジンヨウ化水素酸塩を用いた場合、最も高いエナンチオ選択性を与えることがわかった。基質一般性の検討も行い、2,3-二置換ピリジンおよび環状骨格を有する3置換ピリジンにおいても高ジアステレオ選択的かっエナンチオ選択的に進行した。この成果の一部は学術誌として発表し[研究発表参照 : Iridium-catalyzed Asymmetric Hydrogenation of Pyridinium Salts for Constructing Multiple Stereogenic Centers on Piperidines、Chemistry Letters、2014, 43, 284-286 : 国内および国際学会においても発表を行った[学会発表参照]。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最終目的の一つである、ピリジン類の直接的不斉水素化反応の開発に成功し、その成果の一部を学術論文として発表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
困難であったピリジンの直接的不斉水素化反応の開発に成功したものの、反応条件の過酷さ、および触媒量が多く必要であるという課題が残されている。触媒量が多く必要な理由として触媒の失活種であるイリジウム-ヒドリド架橋二核錯体の生成が主たると考えている。触媒の失活を抑えるような触媒設計ができれば、より効率的な触媒反応の開発ができると考え、新規不斉水素化触媒の開発を行っている。具体的には嵩高いN-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)配位子を有するイリジウム錯体を触媒前駆体として用いると従来の触媒よりも高い触媒活性を示すことがわかった。しかしながら、現在、エナンチオ選択性は乏しく、配位子のチューニングなどさらなる改善が求められている。一方で、新しい触媒系はケトンなどC=Oの水素化にも活性を示すことがわかった。今後、補助配位子の導入など、ファインチューニングを行うことによって、エナンチオ選択性および、活性の向上、C=N, C=O, C=Cなど目的の不飽和結合を選択的に不斉水素化できるような新しい触媒系の開発を企図している。そのような触媒が開発できれば、複雑なキラルな骨格を一挙に合成することができ、医薬品合成ルートを一変させる可能性がある大きな研究であり、学術面だけでなく工業的にも大きなインパクトを与える重要な研究である。
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Research Products
(7 results)