2013 Fiscal Year Annual Research Report
分子間距離測定に基づく脂質二重膜中アンフォテリシンB複合体の構造解析
Project/Area Number |
13J01527
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 泰男 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | アンフォテリシンB / エルゴステロール / イオンチャネル / 固体NMR / 表面プラズモン共鳴法 / 重水素化標識体 |
Research Abstract |
アンフォテリシンB(AmB)はその強力な抗カビ活性と耐性菌の出来にくい性質により、発見から50年以上経た現在でも深在性の真菌感染症治療薬として広く用いられている。AmBは、真菌細胞膜中でステロール分子と共にイオン透過性チャネルを形成し生理活性を発現するといわれている。しかしAmBの複合体は、上述したような薬理学的重要性にもかかわらず、その詳細な構造は明らかにはなっていない。そこで本研究では、近年、脂質膜中における構造解析法として注目されている固体NMRにより、複合体構造の全容を明らかにすることを目的とした。本研究により複合体構造が明らかになれば、よりエルゴステロール選択性を高めた優れた薬の開発につながると期待される。本年度は特に、AmBとエルゴステロールの相互作用解析に焦点を当て、19-d3-エルゴステロールの合成およびそれを用いた固体NMR測定を目指した。19-d3-エルゴステロールの合成は選択的オゾン分解による側鎖の除去などを含む複雑かつ、多段階の合成になることが予想された。そこで、まず比較的合成が容易な19-d3-コレステロールおよび19-d3-7-デヒドロコレステロールの合成を行い、19位に標識を導入したステロールが固体NMR法に適用できるかを検討した。まず、計画通りにコレステロールの19位にヒドロキシ基を導入し、カルボン酸へと酸化後、重水素化ホウ素ナトリウムにより還元し19-d_3-コレステロールの合成に成功した。また、19-d_3,-7-デヒドロコレステロールに関しても同様の方法論で重水素を導入し、7位を酸化することで合成に成功した。それらを用いた固体NMRを測定したところ、予想外にも当初想定していた測定条件では重水素のシグナルを観測することが出来なかった。そのため、現在最適な測定条件を検討しているところである。また、分子間距離測定以外のアプローチとして、様々なステロール類縁体を用いた表面プラズモン共鳴法等によるAmBとの親和性測定も行い、AmBとエルゴステロールの相互作用様式をある程度予想することに成功している。また、AmB-AmB間の相互作用解析に向けた炭素13標識体合成に向けたフラグメント合成も達成している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、ステロール19位に重水素を導入する手法を確立することが出来たため。また、AmB標識体合成に向けたフラグメントの合成も達成することが出来たため。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、AmB-エルゴステロールの相互作用を決定する予定である。そのために、固体NMR測定によるAmB-エルゴステロール間の分子間距離測定を行う。現在合成に成功し七いる19-d_3-7-デヒドロエルゴステロールを用いて測定条件を検討すると共に、過去に合成されている4-^13C-エルゴステロール等の標識体を用いた測定を行い距離情報を取得後、本年度に行ったステロール類縁体との親和性測定により得られた結果と合わせて考察することで両者の結合様式を決定する。さらに、AmB標識体の合成を行い分子間距離測定を行うと共に、複合体を形成するAmBの会合数を算出する。これらの測定から得られた情報を総合し、AmBの複合体構造を明らかにする予定である。
|
Research Products
(3 results)