2013 Fiscal Year Annual Research Report
フラビウイルス特異的抵抗性因子OASによる感染防御機構の解明
Project/Area Number |
13J01563
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
境 瑞紀 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フラビウイルス / オリゴアデニル酸合成酵素 / ダニ媒介性脳炎ウイルス / 病原性解析 / 防御因子 / ウイルス増殖性 |
Research Abstract |
近年ウイルスに対する非特異的な排除機構として、OAS(オリゴアデニル酸合成酵素)によるRNA分解経路が発見された。この経路では、インターフェロンにより誘導されたOASによって最終的にウイルスRNAを非特異的に分解してウイルス増殖を抑制する。ところがマウスのOasファミリーの一つOas1bは、フラビウイルスにのみ特異的な抵抗性を発現する遺伝子として同定された。マウスのOas1bによる特異的抵抗性の発現経路は未だ明らかとされていないが、正常なOas1bを発現するマウスはフラビウイルスに抵抗性が高いことなどが報告されている。申請者は予備実験を行い、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)の強毒株と弱毒株を正常Oas1b発現マウスに接種したところ弱毒株では全てのマウスが生存し、強毒株では全て死亡した。この結果から、Oas1bによって弱毒株の病原性は著しく抑制されるのに対し、強毒株では弱毒株ほど抑制されていないことが示唆された。これを受けてin vivoでの強毒株と弱毒株の病原性の差は、弱毒株ではその増殖性がOas1bにより抑制されるが、強毒株では弱毒株ほど抑制されないことに起因するという仮説を立てた。そこで正常なOas1b及び変異Oas1bをそれぞれ発現するマウス線維芽細胞であるMEF/Oas1b(+)とMEF/Oas1b(-)における、TBEV強毒株及び弱毒株の増殖性を調べた。その結果両株ともに、Oas1bの発現によってウイルス増殖が抑制されているが、強毒株の方が高い増殖性を持つことが示唆された。以上の成績から、Oas1bによるウイルス増殖性の抑制の程度が強毒株と弱毒株間で異なるために、in vivoでの病原性に差が生じていることが予想される。本研究結果は、TBEVに対する宿主の防御因子としてのOas1bの関与を示唆するもので、本ウイルスの病原性解析に重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、Oas1bによるフラビウイルス特異的な認識機構と、ウイルス側の回避機序、および正常なOas1bの発現によるマウスでの感染病態への影響を解析し、Oas1bによるフラビウイルス特異的排除機構が、病態発現にどのように関与しているのかを明らかにすることを目的とした。これまでに、上述9. 研究実績の概要に示した通り、培養細胞におけるOas1bの役割の一端を明らかにした。このため、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでin vitroでの実験を行い、Oas1bによるウイルス増殖の抑制効果を示した。特に現在扱っている、フラビウイルス属のウイルスであるダニ媒介性脳炎ウイルスの、強毒株と弱毒株の間では、Oas1bによるその増殖性の抑制には差が見られた。このことから、Oas1bへの耐性には、ウイルス株間で相違があるものと考えられた。今後は、この相違に寄与するウイルス側因子を探索するため、現在同時に行っているリバースジェネティクス法によるウイルスゲノムの組換え実験により、その因子を特定していく計画である。
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Research Products
(9 results)