2014 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の良質卵を規定する母性RNAに関する分子生物学的研究
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13J01576
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
泉 ひかり 北海道大学, 水産科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ニホンウナギ / 卵質 / 母性mRNA / 人為催熟ウナギ |
Outline of Annual Research Achievements |
種苗生産を確立するためには安定して良質な卵を得る必要があり、卵質改善が重要な課題として位置づけられる。卵質を決定する要因の中でも、卵に蓄積されているmRNA(母性mRNA)の量や質が正常であることは極めて重要な必要条件であると考えられる。そこで本研究では、ニホンウナギを用いて、良質卵と不良卵に含まれる母性mRNAの網羅的比較を行ない、良質卵に必須の母性mRNAを明らかにすることを目的とした。 昨年、RNA-seqにより得られたコンティグのうち、100 base以上の619,029個のコンティグ(N50: 296 b)を用いた。まず、良質卵(受精率80%以上、孵化率80%以上)と不良卵(受精率80%以上、孵化率20%以下)で相対的発現量(RPKM値)を比較し、良質卵に特徴的に認められるコンティグを絞り込んだ。その結果、良質卵に2倍以上多く発現しているコンティグ994個、良質卵のみ発現しているコンティグ1563個が得られた。これらのコンティグのうちBLASTxによりアノテーションが付いたコンティグはそれぞれ148個、227個であった。次に、これらmRNA量を定量PCRにより測定し、良質卵と不良卵で比較した。その結果、12個のコンティグにおいて不良卵で有意に低く、良質卵と比べて1.4-4.1倍低かった。これらコンティグはアクチン重合関連タンパク、分子シャペロンなどと相同性が高かった。よって、これら母性mRNA量が十分量あることは良質卵としての必要条件であることが示唆された。並行して、既知の初期発生関連遺伝子45個(軸形成、転写・翻訳調節、母性胚性転移関連遺伝子)のmRNA量を比較した。その結果、いずれの遺伝子においても良質卵と不良卵の間で顕著な差はみられなかった。また、悪質卵(受精率10%以下、孵化率1%以下)との比較においても顕著な差はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサーにより得られた膨大なデータからのスクリーニングにより、良質卵特異的な母性mRNAをいくつか特定するに至った。このことにより、卵質の分子生物学的背景の一部が明らかになったといえる。また、近年公開されたニホンウナギドラフトゲノムを用いたマッピングも並行して行なっており、さらにいくつかの候補が挙がっている。これらの状況から計画は着実に実行されており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
卵質は母性mRNAの量だけではなく、mRNA局在や翻訳過程とも密接に関わっている可能性がある。そこで今後は、特定した良質卵特異的な母性mRNA群および胚発生に重要な役割を果たすと考えられている因子(母性胚性転移関連因子:pou2など)のmRNA局在およびタンパク発現と卵質の関連について調べる予定である。並行して、卵形成および胚発生過程における発現解析も行なう。また、特定した良質卵特異的な母性mRNA群のうち、初期胚発生過程において機能が明らかでない因子については翻訳阻害実験を行なう予定である。
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Research Products
(3 results)