2013 Fiscal Year Annual Research Report
糖タンパク質エリスロポエチンの精密化学合成とその糖鎖機能解明の研究
Project/Area Number |
13J01661
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 真淑 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 糖タンパク質 / エリスロポエチン / シアル酸 / ペプチドチオエステル |
Research Abstract |
【研究目的】 糖鎖構造の均一なエリスロポエチンを有機化学的手法により合成し、これを用いて活性測定をおこない、エリスロポエチンに存在する3本の糖鎖が持つ生物学的意義を解明する。その研究から、サイトカイン系糖タンパク質の糖鎖をはじめとする、タンパク質に対する糖鎖の機能を今までにない具体性をもって明確化する。 【本年度の成果】 本年度は、天然と同様の24番、38番、83番目に2分岐シアリル糖鎖をもつエリスロポエチンの合成を検討した。新たに24番目、38番目に糖鎖を持つシアリル糖ペプチドセグメントを本申請者が確立したBocペプチド固相合成を用いた手法により合成し、純度よく得ることに成功した。そして、6つに分けて調製したペプチド・糖ペブチドフラグメントをC末端側からNative Chemical Ligation法によりペプチド連結を繰り返し、3本のシアリル糖鎖を持つエリスロポエチン全長の糖ポリペプチド鎖の合成に成功した。しかし、最後の脱保護反応であるシステイン側鎖の保護基であるアセトアミドメチル基(Acm基)を脱保護する段階で、タンパク質問でのアグリゲーションが観測され、エリスロポエチンのタンパク質部分の3次元構築をおこなうことは出来なかった。現在は、より短い糖ペプチド鎖の段階でAcm基を脱保護するエリスロポエチンの新たな合成ルートを考案し、合成検討中である。 また、糖鎖を安定化するために使用していた保護基であるシアル酸上のフェナシル基を短時間且つ収率よく脱保護する手法を検討した。新たに見出した条件を用いれば、長鎖のシアリル糖ポリペプチド鎖上のフェナシル基を緩衝溶液下で副反応を抑えながら脱保護ができ、収量向上に大きく繋がると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以前確立した83番目にのみ糖鎖を有するエリスロポエチンの合成ルートを用いて、24、38、83番目の3カ所に糖鎖を持つエリスロポエチンの合成が容易におこなえると考えていたが、予想に反した副反応が観測された。恐らく、親水性の糖鎖付加が増加したことにより、糖ポリペプチド鎖の性質が大きく変化したことが原因であると考えられる。新たに考案したルートで合成検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き3本の2分岐シアリル糖鎖を有するエリスロポエチンの合成を検討する。新たな合成ルートは、前回のルートで起こった副反応を避けるべく比較的早い段階で保護基を脱保護出来るように考慮した上に、N末端側からのペプチド連結反応を可能にするペプチドヒドラジド体を利用する。これにより、約50残基のシアリル糖ペプチドを収率・純度よく調製することが可能になると期待できる。 また、当研究室で部分的に15N標識した約40残基の糖ペプチドを用いたNMR測定を実施しており、有効な結果が得られている。同様の手法を利用し、部分標識したエリスロポエチンを調製し、糖鎖が無い場合、どの部位が疎水性相互作用でアグリゲーションしやすいか調べる検討も開始する。
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Research Products
(3 results)