2013 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル有効模型に基づく核媒質中におけるη'中間子の性質の解析
Project/Area Number |
13J01879
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 俊太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | η'中間子 / UA(1)アノマリー / カイラル対称性 / η'原子核束縛状態 / 核媒質効果による質量変化 / η中間子 / 非対称核物質 / η-π^0混合 |
Research Abstract |
本研究では、η'中間子の核媒質中での性質の解析を通してハドロンを記述する基礎理論である量子色力学の真空構造をより明らかにし、現実に現れるハドロンの質量等の性質を解明することを目的としている。η'中間子は擬スカラー中間子であるがフレーバー1重項に対応する粒子であるためUA(1)アノマリーの効果を受け大きな質量を持つ。また、このη'中間子質量生成についてカイラル対称性の破れが重要な役割を果たすことが議論されており、模型計算からカイラル対称性の回復に伴って質量が減少することが示唆されている。カイラル対称性の性質が媒質中で変化する可能性が近年実験、理論の両面から議論されている。η'中間子の核媒質中での性質を調べることで、カイラル対称性の自発的破れやUA(1)アノマリーといったQCDの特徴的な非摂動的性質を調べることができる可能性がある。 今年度の研究では真空中でのη'N相互作用に基づいたη'中間子の光学ポテンシャルに注目した研究を行った。これは実験が予定されているη'中間子原子核生成実験に対して、観測可能性の議論の際に重要であるが未知の部分が多いη'原子核系の束縛エネルギーの幅を議論するためであり、η'Nというより微視的な視点からであれば議論が可能である。また、一旦光学ポテンシャルを求めるとそこからη'原子核系の束縛エネルギーといった実験的に検証できる可能性がある量を求めることもできる。また、今年度はη中間子の核媒質中での3π崩壊に注目した研究も行った。η中間子はη'中間子と混合しており、それらの媒質中での混合の性質は非自明であるためη中間子の媒質中での性質の変化を調べることでη'中間子の媒質中での性質も議論できる可能性がある。この研究では非対称核物質中で、η-π^0混合角、η中間子の3π崩壊が比較的多く増大する可能性があることを指摘した。実験的に見つかっている原子核は多くが非対称性を持っているので、この非対称性の効果は実験的に検証することができる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光学ポテンシャルを計算できたことから実験と比較が可能な形で理論的にη'の媒質中での性質の変化を議論できるようになった。また、これまで注目していなかったがη中間子の3π崩壊に着目することでも媒質中でのハドロンの性質の変化を議論できる可能性を指摘することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
η'中間子の核媒質中での性質を議論する際に、その素過程としてη'N間の2体相互作用の情報が重要である。この2体相互作用の強さを検証する一つの方法としてη'中間子の光生成反応を用いたη'N束縛状態の観測が挙げられる。今年度はこの束縛状態の存在の可能性にっいて議論するとともに、η'中間子の質量に関してより微視的なクォーク、グルーオン自由度から議論したいと考えている。 またη中間子崩壊についてもその実験的検証の可能性について、より高次の計算等によってより詳細に議論を行う。
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Research Products
(7 results)